ととさんのレビュー一覧
投稿者:とと
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紙の本鏡の中の物理学
2020/11/17 22:20
量子力学の寓話
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※ネタバレ含む
「鏡の中の物理学」は鏡の中の世界で起こる物理現象が現実世界の物理法則に従っているか検証する。鏡世界と現実世界では左右あるいは前後が逆になる。例えば現実世界で右から左に動く物体が鏡に映ったとき、鏡世界でも現実世界と同じ物理法則に従って運動が起きているか、ということを議論する。これは力学だからまだ分かりやすいが、電磁気学になると少々悩む。結論を言うとそのような鏡世界でも物理法則は現実世界と共通である。しかしここで時間が逆になる“鏡”を考えると、この物理法則の共通性はなくなる。なぜ低いところにある物体は高いところへ戻らないのか。なぜ水は放っておいても氷にならないのか。このような巻き戻しが起こりえない理由を解説する。ユーモアを交えた平明な文章で書かれた一話である。
「鏡の中の物理学」「素粒子は粒子であるか」も面白いが、本書の圧巻は量子的粒子「波乃光子」を被告とした裁判を通して量子力学の本質を解き明かす「光子の裁判」である。量子力学において粒子が二つの穴を同時に通過するという現象についての議論を、被告人波乃光子が二つの窓のうちどちらを通ったのかを争点にした裁判に置き替えて解説する。量子力学をわかりやすく説明した名著である。
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