長州さんのレビュー一覧
投稿者:長州
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紙の本炎環 新装版
2023/03/28 19:12
炎環
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ネタバレアリ
全成が主人公の「悪禅師」、血の繋がりの冷たさに諦念を抱く全成が、野望を抱え、影を生き、最後は甥に殺される。血の繋がりを信じていないにも関わらず、血の繋がっていない妻の実家が自分を救ってくれると信じて裏切られたのが皮肉だった。
梶原景時が主人公の「黒雪賦」、頼朝のことを期待ハズレと思いながらも、石橋山合戦での土肥実平のように彼にかけていってしまう矛盾はまさに黒い一面の雪景色という矛盾したタイトルに合致していた。
保子(阿波局)が主人公の「いもうと」、真っすぐで強い女・保子と歪んでいて強くあろうとする女・政子の対比が良かった。政子から保子への劣等感・嫉妬がに共感する部分があった。
北条四郎義時が主人公の「覇樹」、「四郎!」と読んだ時、四郎は必ずそこにはいないという話が最初に語られるが、後鳥羽院の院宣に対しても四郎は同じようにいなくなってしまうという伏線回収が見事だった。他の主人公と違い、義時の人物像が掴みづらく、不思議な感覚がするのも、やはりそこにはいない四郎を的確に表していた。姫の前を娶ったあとの政子との会話で、姉に対して「生娘でした」と直球に言うところが個人的にツボであった。次はぜひ永井路子先生の「北条政子」を読みたい。
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