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フラーノさんのレビュー一覧

投稿者:フラーノ

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紙の本

細緻な描写と誠実なストーリー展開が魅力

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作者の猪川朱美さんは、雑誌の「本当にあった怖い話」で、読者体験記を書いてらっしゃった頃からのファン。その細緻な描写力が、書き手の誠実さを表しているようで、心惹かれていたのだ。彼女が、オリジナル作品の連載を始めたと知った時、迷った。どんなに絵が好きでも、漫画はストーリが大事だから。数年迷って、或る時3巻まで大人買い。あっという間に、作品世界の虜になった。大正期から昭和に至る、この国の変遷を、異端視扱いされ続けた画家の菅沼英二郎の眼を通し、彼の変化とともに語ってゆく。

死者への思いを残す人たちが、相手の姿の再現を求めて英二郎の元を訪れる。依頼人が語る亡き人たちへの思い出などを聴きながら、英二郎が描き出すその肖像画は、依頼人の心のよすがとなるのだ。

この物語もいよいよ終盤。最新刊の13巻では、昭和19年ごろの敗戦直前の世相が描かれる。ここまで読み通してきて、主人公をはじめとした魅力的な登場人物たちの無事を祈りながら、最終巻の発売を待ちたいと思う私である。

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