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銅大さんのレビュー一覧

投稿者:銅大

2 件中 1 件~ 2 件を表示

紙の本探偵はバーにいる

2000/10/21 20:43

そして今夜もススキノに

5人中、5人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

 ちょっと昔、風俗営業法が変わる前、「ソープランド」が「トルコ」と呼ばれ、エイズがアメリカのホモだけが罹る原因不明の奇病だった頃、俺はススキノでぶらぶらしていた。

 本書は、この出だしで始まる。
 主人公は〈俺〉。名前は登場しない。
 何をやっているかというと、まぁ、何でも屋である。ススキノのような繁華街であれば日本中どこでもそうであるようにいろいろともめ事のタネはつきない。
 酔客が暴れたり、ツケを払わない客がいたり。誰かが突然行方をくらましたり。

 そういう所に、〈俺〉は現れる。そしてもめ事を解決する。

 解決には腕っ節(それほど強くはない。弱くもないが)も使うが、どちらかというとススキノをぶらぶらしながら身につけたコネと、口車を使う。
 もちろん法律を遵守したりはしない。嘘だってつく。実は友人たちと麻薬を作って売ってたりもする。お調子者で女には弱い。小悪党である。

 だが、自分の中にある『ルール』には忠実な男だ。

 もちろん、その『ルール』が明文化されているわけじゃない。〈俺〉が偉そうに過去やら蘊蓄を語ったりするわけじゃない。
 読者に『こいつはルールを守る男だ』と思わせるのはその行動なのだ。

 ここがポイントなのだ。特にハードボイルド系の主人公は。語ってはいけない。
 そうすると、とたんに安っぽくなる。

 だから〈俺〉はススキノをいったりきたりして。
 真相に近づいたり遠のいたりして。
 だが、決して諦めることなく。

 そして今宵も。札幌の繁華街ススキノで。
 探偵は、バーにいる。

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紙の本ピニェルの振り子

2000/10/16 07:40

土の感触

0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

 土の感触がする。

 この作品を読んで感じたのが、まずそれだった。
 私は大学時代、ワンダーフォーゲル部に所属し、山に登っていたことがある。
 日本アルプスのような格好いい所は登ってなくて、主に中国山地の山だ。林道が整備されてればいいが、そうでない所は下生えはすごいわ見晴らしは悪いわ、稜線が五つぐらいあって地図を読み間違えると大騒ぎだわで──楽しかった。

 そして、足元には。土の感触があった。

 話が逸れた。
 異星人によって19世紀の英国人が宇宙に“移植”されてから1世紀。そこで人々は自分たちなりの(19世紀風)の文明を築き上げていた。
 人々が移植された星は一つだけではなく、それらの星には様々な変わった生態系と生き物があった。

 その中の星の一つ。ピニェル。海が広く、人が住む場所は常夏の星。
 主人公の少年、スタンは採集人。ピニェル特産の蝶を採集して、余所の星から来た博物学者に売って生活している。

 そして少年の前に現れた不思議な少女、モニカ。
 何を見ているのか。何を感じているのか。
 スタンは少女に一目惚れして、宇宙船に密航してまでその後を追いかけてしまう。

 その際のどたばたで、彼らはピニェルを取り巻くリングとそこに住む生物の謎に行き当たってしまう。
 地質学的にはあっという間に消えてしまうはずのリング。
 なぜ、それがピニェルを取り巻いているのか。
 なぜ、そこに生物が住んでいるのか。

 そして、オープニングで語られる博物学狂いの伯爵の

「ピニェルのものはすべて高騰する。なぜなら──あそこはじきに滅ぶんだ」

 というセリフの意味は。

 謎を残したまま、スタンは行きがかり上、モニカの助手としてピニェルの生物を手当たりしだいに採取する羽目になる。

 ここで思い出して欲しい。この作品世界は19世紀風の文明レベルと宇宙旅行とが組み合わさっていることを。
 宇宙船を動かすのだって、水夫が係留索を放り、六分儀で天測し、計算尺を駆使する世界なのだ。
 生き物を採取し、調べるのだって、手探りである。

 しかし、物語が進むにつれ、謎はさらに大きくなる。

 常夏の地に生えた大木に刻まれた、飛び飛びの年輪。
 寒い所に置くとすぐに栄養体が乳化する種子。
 事故で不時着した北極冠で、冬眠したほ乳類。
 そして、新しく夜空に誕生した星。

 すべての謎が、ピニェルの『振り子』へと収斂していく。

 19世紀。
 博物学の黄金時代。
 人々は未知の世界に、自分たちの五感を使って手探りで進んでいった。
 TVやネットワーク、書物を通してではなく。
 だからなのだろう。

 私がこの本を読んで、土の感触を思い出したのは。

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