オカジマワカさんのレビュー一覧
投稿者:オカジマワカ
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紙の本ジェーン・エア 改版 上巻
2001/07/25 18:31
外見より凛とした心
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「美人でないヒロインが幸福になる唯一の小説」,筒井康隆がそういう感じの言葉で評した作品。いやな表現だが,英文学史の基本とされる小説は他にも多いのに,十代の頃これが一番のお気に入りだったのはそういうことか,と納得もする。
同じブロンテ姉妹でも,妹エミリの書いた『嵐が丘』のヒロイン,キャシーが美しいお嬢様なのに対し,ジェーンは地味な孤児。キャシーもジェーンも気が強いが,はっきり言ってキャシーはわがまま。でも美人だから許される。ジェーンは伯母の家で「使用人以下」と言われ暮している。大好きな本を隠れて読むことも許されず,抗議すれば殴られる。そのためについ激しい性格が表に出ると「キレる子供」扱いで追い出される。前半のジェーンは悲惨だ。
後半,ジェーンと金持ち領主ロチェスターの関係は,辛い片想いをしたことのある人なら共感できる。ジェーンだから,普通の主従恋愛ものと違い,彼女がひたすら従順というのではない。ジェーンは自分が誰かの恋愛対象になるなどと思ってないから,媚びない。というか媚び方を知らない。だから彼にからかわれたりしても困ってしまう。その困り方がリアル。ジェーンは凛としているが,つんとはしていない。この不器用なジェーンが彼に惹かれていき,苦悩する場面はやっぱり可哀想。
ロチェスターのモデルはこれまた『嵐が丘』のヒースクリフと同じブロンテ・父なので,男性キャラ二人を比べても面白い。どちらも影があってたくましく,内に情熱を秘めた男。ロチェスターの方がかっこいい,というのが通説らしく,私もそう思うが,ジェーンの想いを知ってあの態度はどうかと最近は思う。
この小説の最大の魅力はジェーンという人間だが,暗いイギリスのお屋敷の雰囲気も魅力だし,ストーリーも波瀾万丈。やっと幸せになりかかった時,びっくりな不幸がジェーンを襲う。最後は筒井康隆の言ったようになるので,それを頼りに読みましょう。最近,英文学者サザーランドが「ジェーンは結局幸せになれないだろう」という茶々を入れたが,そういう無粋な解釈はあんまりしたくない。
『ジェイン・エア』という表記される翻訳も多いので注意。
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