ぶーたんさんのレビュー一覧
投稿者:ぶーたん
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紙の本ショートショートの世界
2005/09/24 03:09
ショートショート入門!
6人中、6人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
一般的にショートショートと言うと読者の頭に何が浮かぶのだろう。
星新一だろうか。阿刀田高だろうか。
たとえ作者名が浮かんだとしても、その定義をあらたまって聞かれたとしたら言葉に詰まってしまうのではないだろうか。
本書はショートショートのみについて広範に語られた、おそらくは初めての本である。
著者の高井氏は長くショートショートの実作者として活躍しており
趣味を仕事にした場合、楽しみとしての側面はかなり減殺されるのではないかとも思うのだが、
本書ではそんなことを感じさせない熱気のこもった語り口が特徴だ。
ショートショートが好きでたまらないという気持ちが読むものに強く伝わってくるのである。
内容的にはタイトルに恥じず、ショートショートの定義、歴史、書き方という各項簡潔ながら過不足無くまとめられている。
たとえばショートショートの定義や創作の項では著者の創作講座講師としての顔が伺われ、その道を目指す人には必読の内容だろう。
しかし本読みとして一番楽しめたのは、やはりショートショートの歴史の部分である。
この項では歴史的な流れをあらわす縦糸と、地域的な広がりをあらわす横糸を組み合わせ、
さらにはジャンル的、書誌的なスパイスを効かせつつ
古今東西のショートショートをルーツから探ってみせており、まさにミニ百科事典の趣である。
読書ガイドとしても優れているし、そこかしこに飾られた書影も楽しい。
おそらくこの章を読んだ人は無性にショートショートが読みたくなってくるはずだ。
そういう意味ではあとがきにも触れられている通り
リスト等が削られれたのは新書という形態から致し方ないものの、やや惜しまれる。
『すさまじい』と書かれたリストを見てみたいものである。
しかし好評であれば増補版も続編も夢ではない。
そして北村薫の「謎のギャラリー」のように、本書からアンソロジーが生まれ、新たな読者を増やしていくことも期待しよう。
単純にショートショートに興味ある人はもちろん、ミステリーやSFファン、創作を志す人まで広くお勧めできる好著。
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