とーもさんのレビュー一覧
投稿者:とーも
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紙の本これも男の生きる道
2002/01/02 22:49
「自立」は男の目的か
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橋本治流の、一種の人生論の本。テーマは「男の自立」というコトバだが、実際の主張は「自立は単なる出発点であり目的ではない、大事なことは自分の頭で考えて行動する一人前の人間になることだ」という、まあ要約すればひどくありふれた、陳腐にさえ聞こえる思想である。
彼のこの種の本は、いつも論理の飛躍がかなりひどい(結論が間違ってるというのではないのだが筋道がたどりにくいのだ)。しかし、この本はややていねいに一歩一歩進めながら書いているので、筋を見失うことはない。ま、そのぶん、あの天衣無縫な持ち味が薄いとも言えるが。
しかし、同じ人生論の本ならば、やはり「絵本・徒然草」などの方がはるかに充実していて良い出来かもしれない。かれは何といっても、古典文学の「鑑賞」がもっとも得意で面白いのだ。長いメロディーの創意には乏しいが、他人のメロディーを借りて複雑絢爛な織物を創り出す編曲家の才能に通じるところがあるのかもしれない。
紙の本ドラマの中の人間
2002/01/02 22:53
戯曲を読む面白さを十分に伝える本
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同じ話題の繰り返しが多い最近の彼の本の中では、出色の面白さだ。さすがに演出家を本業としているだけのことはある、と感心する。
「夕鶴」にはじまり、ソフォクレスの「アンティゴネー」から、ブレヒトの「セチュアンの善人」まで、ドラマの中に登場する女性を中心に、ていねいに芝居の台本としての戯曲を読み解いていく。筋書きだけを追うことなく、かつ有名なセリフのさわりの引用集におちいることもなく、ドラマを作り演出するプロの目から、その芝居のいのちの中心に迫っていく態度はさすがである。翻訳劇を多く取りあげながら、優れた翻訳のもつ日本語の美しさや力強さも鑑賞している。
また、この本を通して読むことで、西洋の演劇のたどった古代・古典・近代・現代の変遷と発展、そして日本人にとっての距離感も理解することができる。演劇に興味のある人すべてに薦めたい本である。
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