ヒポちゃんさんのレビュー一覧
投稿者:ヒポちゃん
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2006/07/09 23:33
本当に大好きなんです。だからこそ苦しいんです。
3人中、3人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
戦士クレイの婚約者であるサラの命を救うための冒険の、待ちに待った下巻の登場。謎の病気で余命幾ばくもないという状態のサラ。唯一の特効薬である「奇跡の花」を求めて一行はダンジョンへ向かうが、ハプニング続きでそう容易く事は進まない。
この下巻では、ウィンドウォールという風のモンスターが行く手を阻むダンジョンに、どうやって進入するかという、弱り顔の主人公パステルたち一行の場面から始まるわけだが、上下巻を通して今回の物語は、正直、もやもやした気持ちが残った。
上巻を読んだ時点では、クレイの試練を乗り越えての成長物語だと思っていたが、下巻まで読んでみると、なんだか違う気がする。クレイの活躍(というか登場自体)が見られるのが後半以降と少なかったからかもしれないが、彼の成長物語にしては中途半端になってしまった感が否めない。
そして、身近な人の命がかかっているというわりには、どこか緊張感が足りなく、奇跡の花がなかなか手に入らないイラ立ちなどがイマイチ感じづらかった。
フォーチュン・クエストの作品性から、最後にはハッピーエンドになるだろうと読者側が思っていることは百も承知なのだから、そうであったとしても、本当に助かるのか?と読者を不安に思わせるほどのギリギリの何かが欲しかったと思う。「大魔術教団の謎(上・下巻)」の時のような。
否定的な感想になってしまったけれど、決して面白くなかったわけではないし、山あり谷ありの起伏も充分にあったと思う。いつものフォーチュン・クエストらしいといえばそうだけれど、いつも通りのテンションではなく、人命がかかった今回だけは一歩飛び抜けたフォーチュン・クエストが読みたかったと思うのだ。
本当に大好きで毎回新刊を楽しみにしている作品なのである。大好きな作品を絶賛できないこの心苦しさをわかってもらえるだろうか。ファン歴13年の者の声でした。
2006/02/06 21:54
クレイにとって最大の試練
2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
次はどんな冒険が展開するのだろうと毎回楽しみな大長編冒険ファンタジーの大御所「フォーチュン・クエスト」。今回は主人公パステルたちパーティのリーダーである戦士のクレイをめぐる物語の幕開けだ。
とは言っても、明るく楽しい内容とは言い難い。今回クレイが直面することになる現実は、彼の大切な人の命に関わるあまりに重い内容。今回は彼にとってこれまでにない程の最大の試練になることだろう。
クレイ・シーモア・アンダーソン。代々騎士というお家柄で曾祖父は青の聖騎士として名高い英雄。彼の名前はその曾祖父から受け継いでいる。かっこよくて、真面目で人徳もあり、一見なんの問題もない好青年。
そんな彼の唯一の欠点は、戦士としては優しすぎるところである。モンスターを前に切ることを躊躇ってしまうその優しさは彼の長所でもあるけれど、これは戦士としては致命的な弱点だろう。そのことは彼自身も分かっており、悩みの種にもなっている。
また、曾祖父が歴史上に名を残す有名な英雄で、その曾祖父の名前を受け継いだことが逆にプレッシャーで重荷になっている。なぜ兄たちではなく三男の自分が名前を継ぐことになったのか、今回はその謎が明かされている。その答えは彼の悩みや迷いを払拭してくれるものだったのだろうか。かえってプレッシャーになるのではないだろうか。パーティの仲間たちと同様に今はただ見守るしかない読者側としてはちょっとつらい。
それにしてもなんて不運な男なのだろう。こんなに貧乏くじばかりをひく戦士がかつていただろうか。最大の試練を前に、しょっぱなからつまずき、いつもに輪をかけて不運に見舞われるクレイの姿に、読者の多くは溜息をついて嘆いたことだろう。「ああ〜、クレイあなたってどこまで不幸なの〜」と。
けれど、今回の最大級の試練を乗り越えた時に一つの答えがきっとみつかると思う。クレイ自身がこれから進む道も。
本当に大事なことは安易に決断してはいけない。悩んでうんと考えて導き出した答えならば、どんな結果になろうと後悔はしないはず。だから彼にもうんと悩んで揺るがない答えを見つけて欲しい。
吹っ切れ、自信に満ちあふれ晴れ晴れとした笑顔の彼に会える日が楽しみだ。今ははやく下巻が読みたいな。
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