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コヨーテさんのレビュー一覧

投稿者:コヨーテ

3 件中 1 件~ 3 件を表示

明日スコットランドに行きたくなるのも当然のココロ

1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

 魂をゆさぶられる、という表現が大袈裟ではない本に出会うことは、滅多にあるもんじゃない。魂が飛翔する、となったら、なおさらだ。
 この本を読んで、ぼくの魂は白い小さなボールとなり、えくぼ(ディンプル)いっぱいに、羊や兔たちの土地、ヒースの海岸をゆったりと、時間を止めるように飛ぶのだった。
 スコットランド! 夢のような名前。
 ゴルフという、文化的誤訳の典型みたいなかたちで日本にもちこまれたこの荒々しくも華麗なゲームの、もっとも強靱な心だけが美しさを演出できるスポーツの、孤独な、晴朗な、黄金の夕陽のような、雲の切れ目のような、カモメの声のような、風にとぶ塩や砂のような、なんといってもいいが胸をしめつけずにはいない魅力を、これほどまでに徹底して描きだした本は、これまでになかった。
 アマチュアリズム。愛する心。その精神の真髄を、ぜひ感じとってほしい。それからさっさと荷物をまとめ、重いバッグを自分で担いで、スコットランドに飛び立とう。

Half of GOOD LIFE is GOLF.

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砂漠を歩き、河をわたり、それでも求めるものは何か?

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 自分の国に密入国する? 正気か?
 でもその冒険を本当にやっているこの金髪の男が、自分と同い年の、沖縄生まれのアメリカ人だと知ったとき、ぼくは非常に大きな興味を覚えた。それで、この本を読んだ。衝撃は、期待をはるかに越えて大きかった。
 歴史上いつも存在していた外国人労働者の流れは20世紀後半、世界経済の不均衡がどんどん大きくなるにつれて、誰の眼にも明らかになってきた。80年代以降、ほとんど爆発するように、さまざまなエピソードがメディアの表面に浮かんでくるようにもなった。
 フランスのアルジェリア人。ドイツのトルコ人。中近東の韓国人。イギリスのパキスタン人。日本のブラジル人。こうしたすべての流れで、たぶんもっとも巨大な水脈をなすのは、世界最富裕国アメリカへの、南の隣国メキシコからの流入者たちだ。
 この本では、そんな風に仕事と機会を求めてアメリカにひそかに侵入するメキシコ人たちの、死と隣り合わせの旅にとことんつきあった、ひとりのアメリカ人の体験と認識が綴られる。アリゾナ州の砂漠地帯、地表温度が六十度にもなるそこを、かれらは暗闇とともにわたる。その手引きをするのが、コヨーテと呼ばれる仲介者たちだ。日本への中国からの「渡し屋」である蛇頭と比べることのできる、とても信用するわけにはゆかない、アウトローたち。
 でもそのコヨーテたちと関わり、あるいは距離を置きながら、何かを求めてアメリカに入る者は後を断たない。お金? 希望? 夢? その流れをありのままに認めつつ、著者は自分の国へと、危険を冒して越境してゆく。
 砂漠を生き延びるためには、人はフクロウに、コヨーテにならなくてはならない。その渡りの果てに、何かが約束されているわけではない。それでも、「ここ」にとどまるわけにはゆかないから、「あちら」にゆく。北(エル・ノルテ)に。「アメリカ」と呼ばれる経済体を生み出してきたメカニズムの、もっともシンプルでプリミティヴなかたちが、ここにある。
 すばらしい旅行記であり、経済原論であり、国家論だ。

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紙の本赤道地帯

2000/07/28 23:01

赤道のメランコリー?ちがう、しずかな熱情と、したたるほどの愛!

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 ノンフィクションなのにフィクションだと思われてしまう作品が、ときどきある。有名なところでは今年生誕100年をむかえたサン=テグジュペリの永遠の傑作、『人間の土地』。飛行機という特異なテクノロジーの創成期に、郵便飛行路の開拓という前人未到の使命をおびて孤独な空の旅を重ね、そのまま空に消えていった著者のこの記念碑的作品は、アカデミー・フランセーズの小説大賞を受賞し、フランスのみならず英語圏でも大ベストセラーとなった。その秘密は、やはり言語だ。エレメント(地水火風)のぶつかりあいをそのままにうけとめ、これでもかこれでもかとくりだしてくるしずかな鉱物的叙情の爆発。そんな言語が、事実をほぼ正確に伝えることを使命とするノンフィクションというジャンルとは、どうにも相容れないものだと思われてしまうのだ。
 現代フランスの哲学者・作家・ジャーナリストであるジル・ラプージュのブラジル旅行記も、やはりそのような系譜に属する。本質的に内省的な、きわめてものしずかな魂が、故郷である北アフリカをずらし、ヨーロッパを相対化する土地としてのブラジルに、20代半ばの数年をささげる。それから三十年、初老に達した男がはじめてブラジルを再訪し、過去の夢と達成された現実、現在の夢とありうべき未来のすべてを、まるでおとぎばなしの国のようにふわふわしたリアリティに浮かぶこの途方もない国の各地に、ひとつ、またひとつと見いだしてゆくのだ。
 その文体のすばらしさは、形容のしようがない。心のすばやさがそのままに表れ、太陽が照れば太陽に、雨が降れば雨に、風が吹けば風に、ページが姿を変えてゆく。ものすごい速度と、ブラジルの五百年を相対化する緩慢さが混在し、笑いと涙の一歩手前が、果汁の甘さをもってしたたる。これが、ブラジル。本当に、そう。ジョアン・ジルベルトやエギベルト・ジスモンチをかけながら、夏の夜、これを堪能すれば、もうどこにもゆく必要はなさそうだ。
 訳者によるまえがきとあとがきも、徹底的に熱い! たぶん、ここまで原作者と訳者が同期している翻訳書は、めずらしいのではないだろうか。フローがあり、リズムがある。読み終えたら、ブラジル・レストランに出かけるのもよし、『セントラル・ステーション』をビデオで見るのもよし。どちらにも、道はまっすぐにつながっていて、無限に伸びている。

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