いむ さんのレビュー一覧
投稿者:いむ
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紙の本風の歌を聴け
2002/02/07 15:56
外国の小説をなぞりながら走るマラソンのような作業
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ビールを飲み、パスタを茹で、洋楽を聴き、バーで女性と会う登場人物が、このあとの村上作品にもたくさん出てくる。そう考えれば「処女作にはその作家のすべてがすでに表れている」とは、舞台設定に関してならこの作品についても言えるかもしれない。
しかし、最近の小説にも目を通しているものにとっては、やはり物足りない感じがすることは否めない。村上自身は、マラソンをこなすなどして身体を鍛えるにつれて、淡白だった文体が粘り強いものに変化してきたというかもしれないが、もっと根本的なところで作者の創作意欲を駆動させているものがあるような気がする。
僕が思うに彼は、外国の小説とストイックな生活が好きで、その延長線上に小説があると考えているのではないだろうか(本人がなんと言おうと)。つまり長編小説を書くとは、外国の小説をなぞりながら走るマラソンのような作業なのだろう。紀行文とエッセイは、その途中でとるドリンクのようなもの。
これは悪口では全然なくて、僕としては、オウムとか震災など現実の出来事にあまり左右されずに、そのマラソンを最後まで走り切ってほしいなどと思っている。
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