vatoさんのレビュー一覧
投稿者:vato
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2001/12/13 17:12
新たな旅を可能にする感覚の可能性
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著者自身によって撮影された種々の写真は、幻想的な色合いの表紙に立体的に配されている。それぞれが異なった通路へと誘う写真は、お互いに重なりあいながら総体としてもうひとつの空間を形成しているようだ。今福龍太の新刊は、即物的であることと想像的であることの懸け橋を作ろうと試みていることが、この表紙からもうかがえるだろう。言葉によって築かれる論理の回廊ではなく、想像力によって一気に核心に迫る「イマージュの回廊」をである。ここでは、写真、都市、詩、映像、アート、祭壇、彫刻、音などを感受することを通して新たな旅を可能にする、私たち自身の感覚の可能性が開かれているのである。私たちはこれまで、自分や自分を取り巻く世界を知るために膨大な「言葉」を費やしてきたが、対象に近づくための重要な方法論としての私たち自身の「感覚」を軽視してきたのかも知れない。著者が処女作から思考の中心に据えていたこの「イマージュの回廊」をめぐるさまざまな問題群は、ここにきて著者自身の評論方法の新しい試みともなって現れている。そう考えると、この一冊は彼の著書を愛読するものにとってはもちろん、今福龍太自身にとっても大きな意味をもつに違いない。
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