とむさんのレビュー一覧
投稿者:とむ
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紙の本内なるネコ
2001/05/07 17:53
奇人・バロウズおじいさんの「ネコの本」
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倒錯、混乱した「裸のランチ」とは一転、読み易い(他作と比べると恐いほど読み易い)文章。前知識無しにこの本だけを読むと、ただの猫好きおじいさんの猫日記?と誤解してしまうかもしれません。(そう言った読み方、楽しみ方をしても言いと私は思います)ところがどっこい、このバロウズおじいさんは有名な「奇人」さんなのです。
「昔はすっごいジャンキーだったんだよ、とか、冷酷な顔のくせにホモの女役なんだよ、とか、奥さんを殺しちゃったんだよ、とか、ゴシップネタには困らない人」と解説の方が書いていらっしゃるそのまま。「奥さんを殺しちゃった」のなんて、頭の上にシャンペングラスを乗せての「ウィリアム・テルごっこ」で失敗して射殺してしまったという…。最近では、CM出演やCD制作に参加したり(!)ともかくハチャメチャな御老人です。
バロウズの事を知っている。一冊でも読んだ!という方にはもうこういった説明は不要でしょう。しかし、これからバロウズの本を読んで見たいのだけれど…という方、はっきり言ってどの本から手をつければ良いのやらお困りのはず。(映画「裸のランチ」を観て、良かったので原作にも…と手を出してみたら、ワケが分からず挫折してしまった。という方も多いのでは?)
この本は、バロウズの他の著書とは少し趣の違う、どちらかというと一見平和で、私的な日記・スケッチ的な作品で、彼の愛するネコ達(本物のネコでもあり、その他と深読みも出来る「ネコ」)との生活について、また、ふとした拍子で出てくる過去の思い出や、はたまた主義主張、等が織り交ぜられたバロウズ「晩年」の作品であります。
ですからその点で、バロウズ世界の「出口」的作品であり、本来はバロウズ著作を数作読んで、その背景なども知った上で読まれるのが適当かもしれない本でもあるのですが…。 しかし!!バロウズの「迷路」世界に入ろうとしても入れない、そんな方には出口も入口も同じ。そもそも「迷路」は出口=入口!どこから入ったって良いのです。ネオンの灯った分かりやすい出口があれば、それが入口。
既にバロウズ作品の虜で、「バロウズの事がもっと知りたい!」人には勿論。逆に入口さえ分からずに「そもそもバロウズって何なのさ!」と逆ギレしかけている貴方!裏口からこそっと入ってしまいましょう。そして、「バロウズ迷路」の常連さんから初心者さん、「ネコ」という言葉につられて入ってしまった…アレ?という猫好きさんまで、一緒になってグルグル迷い歩こうではありませんか!迷い心地満点は保証。(注:体調のすぐれない方、妊娠中の…以下、遊園地常套句参照。身長制限無し)。
★参考までに、似ている本は『ノラや』(内田百間・著)
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