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やぼさんのレビュー一覧

投稿者:やぼ

2 件中 1 件~ 2 件を表示

紙の本森の旅人

2001/03/05 02:50

穏やかな語りの底から、確かな希望が伝わってくる。

1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

 「この本を読み終えてページを閉じたとき、だれもが寡黙になるだろう。胸の奥が温かくなり、ゆっくりと、熱い固まりがのどに込み上げてくる。」

 この本の解説の最後で、松沢哲郎さんはこう書いている。私もまったく同感である。

 松沢さんは、京都大学霊長類研究所の教授で、天才チンパンジー「アイ」プロジェクトの中心メンバー。日本のミスター・チンパンジーと言っても過言ではない。松沢さんが日本のミスターチンパンジーなら、筆者のジェーン・グドールさんは間違いなく、イギリスの、いや世界の、ミス・チンパンジーと言える。

 広く知られているように、グドールさんは、日本が世界に誇る霊長類研究がまだ黎明期にあった1962年に、当時世界で初めてチンパンジーの餌づけに成功し、日本の研究者に先んじて、チンパンジー研究における数々の先駆的な成果をあげていった人物である。
 1986年に出版され、日本でも1990年に翻訳出版された「野生チンパンジーの世界」(ミネルヴァ書房)は、今でもその輝きを失わず、「チンパンジーの百科辞典」とも言われている。

 本書は、そのグドールさんによる、初めての本格的な自伝である。タイトルに「旅人」とあるように、幼少のころから現在に至るまでグドールさんの歩んできた「旅」を、書き綴ってある。

 前編を通じて、終始、淡々とした調子で語りが進んでいく。訳も非常に読みやすい。その中には、2度の結婚とその破局をはじめ、私的な事柄も率直に語られている。

 ただ、本書の最大の特徴は、その淡々とした穏やかな語り口の奥底から、私たち人間の、地球の、そしてあらゆる動物の未来に対する希望が、読み手にひしひしと伝わってくることであろう。

 グドールさん自身、単に楽観的にその希望を抱いているわけではない。地球環境の破壊を心から憂いており、「みわたせば、つぎの1000年間に希望はないとおもわれるようなデータばかりだ。」と述べている。この状況を改善させるための時間は残り少ない、とも繰り返し述べている。

 しかし、グドールさんは、「1ヒトの脳、2自然の回復力、3世界の若者にみられるエネルギーと意気ごみ、4ヒトの不屈の精神」を理由として、希望をはっきりと表明している。特に、「4ヒトの不屈の精神」の項では、世界中を講演などで飛び回る中で知り合った人達の、文字通り「不屈の精神」が、述べられている。本書のその個所を通読した人は、ヒトの持つ可能性について、大いに励まされるだろう。

 本書の原題は、「REASON FOR HOPE」である。直訳すれば「希望する理由」。本書を読み終えた人は、必ずや、このタイトルの意味がわかるだろう。そして、松沢さんの言うように、「ゆっくりと、熱い固まりがのどに込み
上げてくる」のを感じるだろう。

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紙の本ゲノムが語る23の物語

2001/03/05 23:18

読みやすく工夫され、なおかつ高水準を保つ

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 筆者は、ゲノムにまつわる多様なトピックを、ヒトのもつ23本の染色体と関連させて次々と語っていく。そこで扱われている内容は、環境決定論、遺伝子決定論、優生学、利己心や病気やストレスと遺伝子の関係、遺伝子治療、雌雄を決定するX染色体とY染色体の「闘争」などなど、実にボリュームたっぷりである。
 その分、初学者には読みづらいだろうと思われる箇所も、ままある。その箇所は読み飛ばして構わない。たとえそうやって飛ばし読みを進めていったとしても、ゲノムに関連する情報の巨大さ、ゲノムに秘められた可能性の奥行き深さを十分実感できるはずだ。
 個人的には、最後の2章、つまり「優生学」の章と「自由意思」の章が、一番参考になった。
「優生学」の章は、優生学についての予備知識がなくても十分理解できる。理解できるだけでなく、深く考えさせられる。優生学における最大の罪は、個人の利益よりも社会の利益を優先することを「強制」することである、という主張は的確である。それと同時に、筆者はこうも述べている。「われわれは、国家による優生思想を拒絶した結果、結局は個人による優生思想のわなにはまる運命だったのだろうか?」この問いにどう答えるかは、本書を読まれた方にお任せする。
 「自由意思」の章では、まず筆者は、遺伝子が行動に影響すると同時に行動が遺伝子に影響する、という前章までの主張を確認する。すると、結局私たちは、遺伝的または環境的な「決定論から逃げ出せない」のだ、という点も確認する。その上で筆者は、ただし「良い決定論と悪い決定論--つまり、自由な決定論と自由のない決定論--を区別することはできる」と述べる。そして最終的に筆者は、「自由行動とは、他人ではなく自分自身に基づく決定論を表現することだ。つまり、決定論かどうかが問題なのではなく、だれが決めるかが問題なのである」という結論に到達する。その想いは、「自由という翼をもった決定論へ」という、この章の最後の見出しに強く込められている。
 生物学的・科学的(と呼ばれている)知識が、すぐに決定論と結びついてしまう傾向の拭い去れない現在の日本において、本書の最後の2章は、そういう傾向に対する1つの答えを示したものだ、と言えるだろう。

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