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zeroさんのレビュー一覧

投稿者:zero

4 件中 1 件~ 4 件を表示

紙の本アーサー王と円卓の騎士

2001/10/25 17:40

伝説の都キャメロットへの旅

9人中、9人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

 アーサー王と、円卓の騎士たちの物語といえば、古典文学の定番のひとつとして、その名を知らない人はいないほどの作品です。
 物語の内容は、イギリスの伝説上の王アーサー自身の生い立ちと、成長、即位から始まって、彼が王になった後の、宮廷キャメロットに集う騎士たちのエピソードが、それぞれに関連を持ちつつ、一話完結の形式で集大成されたものです。
 岩に突き刺さった剣を、少年アーサーが引き抜いて、彼こそが王だと分かるエピソードなどは、アーサー王の英雄譚の始まりとして、あまりにも有名です。
 彼の王妃である美しいギネヴィアと、騎士ランスロットの、道ならぬ悲恋には、静かだけど激しい情熱があります。心から尊敬する王の妻と、真剣に恋に落ちてしまうなんて大変なことです。お互いを労りあう三角関係は、晴れやかな栄光の陰で、いつも彼らを苦しめます。
 緑の騎士とガウェイン卿の果たし合いの約束の物語には、ホラー映画のような怖い展開や、思わずニヤッとするような、恋の駆け引きもあります。旅の途中に大怪我をしていたところを助けられたお屋敷で、ご主人が狩に出かけた間に、美しい奥方が「私にキスして」とベッドで言い寄ってきたとき、ガウェイン卿はどうしたでしょうか?
 いろいろな面白い物語の要素が、惜しみなくぎゅっと詰めこまれているのがアーサー王と円卓の騎士の物語。何冊もの小説を一気に読んだような満足感があるのではないでしょうか。
 アーサー王の物語は、他にも様々な書き手によって小説にされていますが、この、サトクリフの手による作品では、英雄アーサー王や騎士たちの強さや気高さとともに、人間らしい苦悩や見栄、時には手酷い過ちを犯すような心の弱いところまでが、実に鮮やかに描かれていて、彼らが単なる遠い時代の伝説の中の人物としてではなく、自分と良く似た、迷いながら一生懸命生きている一人の人間だと身近に感じられます。
 これまでに他のアーサー王物語を読んだことがある人も、まだ一度もアーサー王物語に触れたことがない人も、この一冊を手元に置いて、伝説の都キャメロットへの旅をしてみてはいかがでしょうか。胸躍る、愛と冒険のツアーが、あなたを待っています。

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紙の本半身

2003/07/14 14:54

この物語は、本当に恐ろしいものの正体を、ラストシーンに秘めている。

1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

 19世紀にイギリスで流行したという、心霊主義を主な題材とした恐怖小説であると同時に、読者に物語の真相を探らせる、推理ものとしての要素もたっぷりと盛り込んである作品です。

 物語の主人公は、英国に住む上流階級の女性で、尊敬する父を亡くし、その失意からさめやらぬ人物です。婚期をすぎても良縁に恵まれず、美しい妹の結婚を前に、家族から白い目で見られ、肩身の狭い思いをしています。

 そんな彼女の心の支えとなっていたのが、ミルバンク監獄への慰問でした。複雑に曲がりくねる薄汚い陰鬱な廊下、その奥にある小部屋のひとつひとつに、罪を犯した女達が閉じこめられています。
 粗末な囚人服には女性らしい気持ちを満たすものは一切なく、不潔な部屋の悪臭の中で一日働かされる女達を、暖かく励まし、諭し、気高い女性の模範を示すことが、主人公が行う慈善。

 日記形式で綴られる物語の中で、主人公は赤裸々な独白をします。
 ──私は醜い。妹のように美人じゃない。
 ──ミルバンクの女たちを見ていると気が安らぐ。自分より不幸な女がいると思うと。

 そんな彼女がもっとも安らぎを感じた囚人は、殺人の咎で収監されていた、美貌の霊媒師でした。
 その娘はほとんど天使かと思えるほど美しく、汚れなく、窓からさす陽もわずかな独房の中で、どこから手に入れたのか、スミレの花を捧げ持って横たわっていました。
 霊からもらったのだと、霊媒の少女は主人公に語ります。
 そして、生まれつき霊が見え、その声を聞ける者の生き様を語ります。
 殺人の罪も少女自身が犯したものではなく、呼び出した霊の仕業であったことも。

 主人公はほとんど恋に近い崇拝を、その少女に傾け、取り憑かれたようにミルバンクへと通い続けます。
 やがて彼女たちの思い詰めた気持ちは、常に、永遠に、互いの傍にいたいという、陶酔的な感情へと上りつめてゆき、物語は静かなクライマックスへと突き進んでいきます。

 囚人への思慕にのめりこんでいく老嬢の心の震えは、恐ろしいほどの生々しさ。
 熱にうかされた目で、髪振り乱し日記帳に向かう彼女の姿が、薄暗い部屋のなかに垣間見えるような錯覚さえ覚えます。

 最後の日記に記された出来事を、いったい何人の読者が想像できたでしょうか? 想像できなかった……いや、したくなかった、と言うべきでしょうか?

 この物語の筆致は、ほんとうに美しいのに、その筆で描かれる出来事は、恐ろしいほどに醜い。社会の、人間の、女の醜さが、残酷なまでに赤裸々に、この日記帳の中に詰め込まれています。

 他人の日記など読んでもろくなことはない、しかし、他人の心の恥部をこっそりと暴く浅ましい快感が、この作品にはあります。
 ひっそりとページをめくってください。
 作品と、それに共感する自分の心の醜さに恐怖しつつ。
 できれば、蝋燭の明かりの下、ひとりきりになれる秘密の部屋の中で。

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紙の本最後のひと葉

2001/10/31 15:33

愛する人への贈り物

1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

 クリスマスに贈りたい本と言われて、最初に思いうかぶのは、私の場合、O・ヘンリーの「賢者の贈り物」だ。短編なので独立した本はないが、短編集「最後のひと葉」の中の一作として収録されている。
 短編「賢者の贈り物」は、とても貧しい、しかし慎ましく幸せに暮らしている若い夫婦が、お互いのためにクリスマスプレゼントを用意するストーリー。二人とも、愛するパートナーのために、自分のいちばん大切なものを犠牲にして、クリスマスの贈り物を用意する。その結末には、ちょっとした悲喜劇とも言える、意外な展開が待っている。
 相手を深く愛していて、よく理解しており、自分のことは犠牲にできる人間どうしならではの出来事で、なんともいえない泣き笑いの気分にさせられる。O・ヘンリーの作品の魅力である、温かい人情味と、切ないもどかしさ、鋭い人間描写があらわれた内容だ。
 クリスマスに大切な人たちに贈るのは、品物ではなく、それに託した愛情。「賢者の贈り物」は、そういう気持ちを改めて実感させてくれる物語である。今年のプレゼントを選ぶ前に、心に呼び起こしておきたい一作だ。

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紙の本銀の檻を溶かして

2003/07/14 14:11

萌え萌え妖怪探偵、現代を斬る

0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

 たいへん好評なシリーズもの本格推理小説とのことで、興味を持って一作目に挑んでみました。
 帯コピーは「本格ミステリとヤングアダルトのアルペジオ────大森 望」 

「アルペジオ」の意味がわからず、あちこち調べてみたところ、音楽用語で、イタリア語 arpeggio 、ハープを弾くような爪弾く奏法、分散和音のことをいうのだそうです。
 つまり、本格ミステリであったり、ヤングアダルトであったりを、その時々で爪弾くように織り交ぜる作風ということなんでしょう。

「銀の檻を溶かして」の内容は、まさにそんな感じ。
 ヤングアダルトの作風で描かれた本格推理ストーリーというのではなく、ヤングアダルトな部分があったり、そこから本格推理ものにスイッチされたりと、作品の主眼が場面ごとに頻繁に入れ替わるのです。

 推理ものとしてのメインとなるのは、ある雪の日、学校の校庭に現れた巨大な雪の妖精、人型の文様です。出入りした足跡がなく、完全な密室と思われたその中心に、男の子の遺体が雪に埋もれ、隠されていました。
 この不思議な密室殺人と、その被害者の母親のもとに現れるノックする幽霊、また別の連続殺人事件とが、最終的にひとつの物語へと解き明かされてゆきます。

 しかも、その事件に挑むのは、何百年もの歳月を生きてきた妖怪3人の、現代(いま)を生きる仮の姿、優しげで気遣い細やかな美青年、毒舌でワガママな知性派美少年、どことなくドジなショタ系男の子という、萌えキャラ3点セット、薬屋探偵さんなのです。
 彼らは、妖怪たちが人間と衝突することのないように、怪事件を秘密裏に解決する仕事を陰の生業としています。

 妖怪や悪魔は実在する──それが、この物語を楽しむにあたって、読者がまず最初に受け入れなければならない概念です。
 そして、それに劣らず重要なお約束となるのは、かっこいい男の子たちのかっこよさについて書かれた文章を読むのは、犯人やトリックを推理することと同じか、それ以上に楽しい、という考え方です。

 本格的な推理要素は登場しますし、読者が犯人を想像するための伏線も、きちんと提示されています。しかしそれは何とはなしに添え物的であり、登場するキャラクターの魅力を語ることが、作品の大黒柱として機能している感があります。
 事件とは直接なんの関係もない、探偵たちの食べ物の好みや、過去の経歴、生活ぶりについての描写が多々登場してきます。最後まで意味のわからない、訳もなく謎めかせた台詞も、幾つかあったように感じました。
 突き詰めて悩み始めると、この探偵さん達が妖怪である意味って何なんだろうと、うっすら疑問にも思えてきます。

 しかし楽しければいいのです。
 それがフィクションの喜びってものではないか? そういう考え方で書かれ、読まれる作品があってもいいんじゃないでしょうか。
 難事件が解決されるのを楽しむのではなく、難事件を解決する探偵を愛でる。この作品を100%満喫するために必要となるのは、そういうスタンスだと思います。

 付いていける人だけが付いていく。キャラ萌え本格ミステリ第一弾。妖怪探偵たちの鮮やかな名推理を、どきどきワクワクお楽しみください。

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