作者本人 前野 重雄さんのレビュー一覧
投稿者:作者本人 前野 重雄
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紙の本前野重雄の球界遺産
2001/09/07 13:29
【著者コメント】一度「立ち読み」してみて下さい。「愛用品」から天才選手たちの人物像がモロ見えです。
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この本は、作者(撮影・文)の私がエラいのではなく、登場人物の“遺留品”の圧倒的な存在感がエラいのである。
『世が世だったら』と、知り合いの編集者やデザイナーは“値段の高い本”を嫌う今日の出版界を一様に嘆いてくれる。そこには「もっと大きな判で」「もっと上質な印刷で」この本をそれら“天下の中古品”にふさわしいステイタスを与えたかった…と、彼らなりの立場から、天才らがなすりつけたキズ、クセの“荘厳さ”に突き動かされ、そう出版不況を嘆くのである。
集英社には勇気があった。この本の出版に際して多くの出版社から打診がじつは寄せられていた。しかし、それらの全ては現場の担当者は熱意いっぱい…だが、役員会や社長決済で「単行本化」はことごとく却下されてきた。
ある出版社などは社長までが賛成派に回ってくれたものの、『経理担当重役』の反対でチョンとなった。
『カラーの写真集なのに、今どきヘアーヌードでもないのに3000円近い本じゃ絶望的』との意見がそれら見送り組の主張であった…にもかかわらず、集英社だけが『トーンダウンしても出版化したい』と現場が状況を押し戻してくれた。
彼らを後押ししたものに、2年前の夏渋谷パルコの小ギャラリーでこの本に出てくる品々をライブで陳列し、私が天才たちの解説を文を添えた展示会があった。そのライブが、ある記録をこしらえた。それは『入場者の場内滞留時間がもっとも長かった』というパ社にとっての名誉の記録である。
猛暑の中、そのスペースは冷房がその館ではもっとも効かない…といったハンデまでありながら、(宣伝もロクにしなかったため)フラリと入場した買い物客がいつの間にか押し黙り腰をかがめ、噴出す汗を掌であおぎながら見入って下さる光景にボクは鼻の奥がグッと詰まった、集英社の出版編集長もそこに感動してくれた。
『一人でも多くの人に、(この本で取り上げた)天才たちを知って貰いたい』そうした欲望。人間のもって生まれた欲望の中で初めて味わう、いわば『告知欲』ともいうべきものがそれ以来、私をかきたてて止まない。
このHP上の表紙写真には不自然な空白(緑の部分)がある。ここにはこの本の出版を知ったあのイチローが、彼の携帯電話から直接贈ってくれた、ズシリと重いこうした私の表現活動への賛辞が「腰巻」となって埋められている…のだが、彼の取り巻き版権の関係で『ほんパラ!関口堂書店』での大健闘の際にも削られて、読むことができない。
またそれだけの腰巻がありながら、出版界の力関係なのだろうかほとんど出回っていないこの本がたまに書店にあっても(腰巻が見えない)書棚にひっそりとささったままで、背表紙のまま死んでいこうとしているのだ。
もう一度云うが私がエラいのではない。この“廃棄物集”に2800円払い、本棚に置いてあったとして何年経とうともいったいこれをあえて捨てる御仁が果たして居るものか…と本気で私は信じ込んでいる。
メジャーのキャップが4300円平均だとしたら、この2800円ほど安い対価はないと思う。だいたいキャップを売る店を経営する私が云うのだからこれほど正しい言い分はないではないか(笑)。
よろしくお願い申し上げます。前野 重雄 拝
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