Danielさんのレビュー一覧
投稿者:Daniel
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紙の本不倫
2001/09/23 02:25
彼女に読んでもらいたい小説
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アカルサが印象的な一冊でした。表面的には、不倫の恋愛小説なのですが、あっけらかんとしたアカルサではない、主人公が生きる知恵として身につけたアカルサが印象的な一冊でした。
生きる知恵として身につけるアカルサとは、現実を生きる大人のパワーとしてのアカルサです。薄倖を気取ったヒロインでは生きていけません。いえ、そんなことはありあませんね。薄倖を気取ったヒロインでありながらも生きていける人はいらっしゃいます。でも、アカルサを身につける人は違います。気取っていても誰もご飯を炊いてくれないし、掃除もしてくれない。働いて現金収入を得なければ、家賃が払えない。家族に病人が出れば世話をしなければならない。そんな人は、薄倖を気取らずに、みんな明るく日常を過ごされています。
僕がこの一冊を読んで強烈に思ったのは、そんなふうに日常を明るく生きる彼女にお勧めしたいということです。
この小説の印象的なシーンに、病院での主人公と看護婦との会話があります。お互いのいたわり合いと心づかいに胸打たれるシーンです。実際に介護を経験した人の話を聞くと、肉体的にも、精神的にも大変な様子です。看護や介護に限らず、世間の荒波にもまれ、張り切っている女性は大変そうです。僕がこの小説をお薦めしたいのは、そんな彼女です。自分探しの旅に出るなどもってのほかな日常に追われつつ、空虚の意味を知っており、コミカルになるかもしれなくても、自分の内面を直視し、努力せんとする彼女です。
彼女に、その生い立ちとアカルサを身につけるしかない現実をお伺いしたとき、僕は自分を振り返って、家族も、休日の用事もなく、サラリーマンとしてのナイントゥーファイブしか背負っているもののない、自分の軽さに唖然としたものです。彼女には「何一つ不自由の無い自分の身の上に感謝するばかりです。」としか言えなかったのを思い出します。
だから、今は、彼女にこの小説を推薦します。見かけ上、コミカルな不倫の恋愛小説として楽しく読める、この小説は、貴女のようなアカルサを持つに至った女性へ捧げるために書かれたものなのです。
彼女に読んでもらいたい小説でした。
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