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  3. くろねこさんのレビュー一覧

くろねこさんのレビュー一覧

投稿者:くろねこ

85 件中 1 件~ 15 件を表示

紙の本

紙の本ある愛の詩

2004/03/16 22:37

美しい海、心、歌声、それが心を癒していく

0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

友人に誘われて行った小笠原の島で、
イルカと交流する力を持った青年拓海と出会った流香。
出会いのシーン、月の光を浴びた砂浜で、
1人流香が歌うシーンの幻想的な美しさ。
拓海にしか心を許さないイルカのテティスさえ
聴き入るその歌声。

無邪気に流香に近寄り、あっけらかんと「好きだ」と
告げる拓海。
なんて無邪気に微笑むヒトなのでしょう。
翳りなんて、かけらもないような太陽の微笑み。

天使の歌声を持ちながら、哀しい闇を心に秘めた流香。
彼女には、拓海の微笑が、どれほどまぶしく見えたことか。
それは、自分の気持ちに封をして、気付かないふりを
してしまうほどに。

そんな2人を見守る拓海の祖父留吉の持つ包容力。
幼くして両親を失くした拓海をテティスに引き合わせ、
天衣無縫な拓海の成長を、たわめることなく
見守っていた留吉の大きさ。

海の星
タコの木のブレスレット
美しいアイテムたち。
美しい島に似つかわしいものたち。

旅行を終え、東京に戻った流香を追って上京した拓海。
流香の心の中の闇に気付き、拓海のとった行動。
一時的に、流香の誤解を招き、キツイ言葉を
投げつけられいようとも、流香のためと信じて
行動する拓海の純粋な心。

素直になれない流香が、心にもなく投げつけてしまう
言葉を、受け止める拓海。
都会のブルードルフィンを見詰めながら、
ただ、流香のためを想う拓海の心

想いよ、流香に届けと、祈らずにいられない。

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紙の本

紙の本黄昏の百合の骨

2004/03/16 21:58

謎と疑惑に満ちた恩田ワールドを堪能

0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

不思議な雰囲気の漂う恩田ワールド
思いっきり堪能できました。

近所の人から<魔女の家>と呼ばれる古い洋館
屋敷の主である祖母がなくなり、その遺言によって
その屋敷に暮らすことになった理瀬。

彼女が、半年間そこで暮らすことを言い残した
祖母の真意はどこにあるのか。

同居するのは、もとからそこに暮らしていた理瀬の
叔母に当たる梨耶子、梨南子の2人。
彼女たちにすれば、母が、いきなり、その家に
理瀬を半年以上暮らさせなければいけないと
遺言を残すなんて、面白いわけがなくて。
理瀬がなんのためにやってきたのか、
何を探しているのか、と疑心暗鬼。
きっと、何か財宝が隠されているのではと
あれこれ探りをいれてくる。

姉妹でありながら、まさに正反対の2人。
激情型の梨耶子。
穏やかな梨南子。
一見、何かやらかしそうなのは、梨耶子。
だけど、物静かな梨南子の方が、むしろ、
何を考えているのか分からない穏やかな怖さもある。
少年が、理瀬に告げた言葉を聞いてからはなおのこと。

心臓が弱く、家にこもりがちな慎二。
その分、観察者としての<目>を育む機会には
恵まれているはず。
でも、病気がちであるがゆえの思い込み、
そんなものは、含まれていない?

祖母の1周期のために訪れた亘と稔
爽やかで、明るくて、陽性な亘
だからこそ、言えないことも、ある。
守りたいから。大切だから。
理瀬の年齢で、すでに、そんなもの想いを
知らずにいられないなんて、何か切ない。
無邪気に遊びまわる時代を、彼女は知っているのかしら、と。

そんな中、事件は起こってしまう。
梨耶子を襲った恐るべき事件。
憎らしい人ではあったけれど、
憎めないところもあったのに。

そして、理瀬の友人朋子に思いを寄せる少年も…

誰もが、何か暗い秘密を隠し持っているかのような世界
黄昏の…

その屋敷の秘めた暗い秘密
それが、そこに住む人を撓めてしまうのか…。
そこに住んだ人が、その屋敷をゆがめてしまったのか。
むせるような百合の香りの中。

理瀬が進む世界を、これからも、見詰めて行きたい。
彼女のこれからが、とても気がかりで。

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紙の本

紙の本ホワイトグッドバイ

2004/03/16 21:56

雪は降りしきる。全ての想いを覆い隠すように。

1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

大好きな、「天国の本屋」シリーズの作者の作品
ということで、同じような雰囲気を期待して読み始めたので
前半部分の展開には、ちょっとびっくり。

雪に埋もれた街
はるばる訪れた男
彼は、世界的に有名なテロリスト
彼を追うのは、ユーロポールと、そして、もっと恐ろしい組織

白い、白い世界
どこまでも白い世界
全てを覆い尽くして、なお降り続く雪は
この物語に、なんてふさわしい

12年ぶりに、その街に舞い降りた男の心情
12年前、ただ1度、訪れた街を、選んだ彼の想い

追い続ける捜査官、一瀬の想い

響き渡る銃声も
醜い人の罪さえも
降りしきる雪は包み込んでいくから

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紙の本

紙の本今日を忘れた明日の僕へ

2002/07/08 23:54

記憶が蓄積できず、自らの拠って立つところを失った男。彼は事件の犯人なのか?

0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

交通事故のため、記憶を蓄積できなくなってしまった<僕>
うたたねであっても、眠ってしまえば、それ以前の記憶が
まったくなくなってしまう。
頼りは、自分自身がことこまかくつけている日記。
たとえ、それを自分が書いたことすら覚えていなくても。
なんて、なんて不安定な心理状態に置かれるのでしょう。
自分自身が、昨日の続きの自分でないということ。
拠って立つ記憶がないということ。

恐ろしく、残酷なこと。
それを、毎朝目覚める度に<新しく>おしえられるなんて。
そして、毎朝、毎朝、それを夫に告げなければならないなんて。
妻、奈々美の繰り返す地獄。
目覚める夫は、毎日新しい夫。
目覚める自分は、昨日の続きの自分。

自分自身のふがいなさ、妻への申し訳なさ。
追い討ちをかけるように接近してくる由嘉里。
雑誌の取材だというけれど、それだけではなさそうな彼女の
本当の目的は、どこにあるのか?

記憶がないなんて、それだけでも不安なのに、
時折、記憶をかすめる恐ろしい映像。
その意味は?
親友の死、女子高生の自殺。
それらは、なんの関係があるのか?
自分が何をしたのか、しなかったのか。
それが分からないなんて、恐ろしい。

でも、それを乗り越えるためには、
自身で真実を見つけるしかないのです。
ハンデを背負いながら、動き始めた<僕>

やがて辿り着いた真実は、何か悲しい…

それにしても、それが、日記から推理されうるとは。
うまく騙されてしまいました。
黒田氏の騙しのテクニックは天下一品。

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紙の本

紙の本不安な童話

2002/07/05 22:43

生まれ変わり?心の中から生まれる知らないはずの記憶の意味は?

0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

「あなたは母の生まれ変わりです」
そんなことを突然言われたら?
しかも、悪いことに、その人の言う根拠に、
一々、もっともな点があったら?
おまけに、その前世というのが、25年も前に
変死した女流画家高槻倫子だなんて。

転生というものが、本当にあるのかどうか、
私には、分かりません。
ただ、ありえないとは言い切れないとは思っています。
万由子だって、とりたてて、そういうことを
真剣に考えたことなんて、そうなかったはず。
でも、どう考えても接点なんてなかったはずの
倫子に関わる<記憶>が、自分の中にあるとしたら?
自らの根源に関わる問題。
だって、自分がもし、「倫子」だとしたら、
万由子は、いったい、どこに行ってしまうのでしょう。

上司である大学教授とともに、その件に関わり始めた途端、
彼女の周りで起る奇怪な事件。
この泰山先生のキャラが、なんとも悠然としていて素敵。

万由子は、いわゆる「見える」力を持っています。
そして、高槻倫子も…

倫子の息子秒のたっての頼みで、倫子の遺した絵を、
遺言どおりの相手に届ける彼女たち。
その絵に倫子が込めた思いって…
そこに思いを馳せるのは、あまりにも痛い。
絵を受け取った英之進や、十和田女子など、
彼女を大切に思う人は、たくさんいたというのに。
愛情の表し方、受け取り方を知らない倫子は、
本当に悲しい存在。

画家としては天才でありながら、エキセントリックな倫子。
その、エキセントリックなところが、
彼女を死を招いたのか?
まるで、過去から倫子が蘇ってくるかのように
万由子の中で大きくなっていく倫子の存在。

やがて、事件は幕を下ろします。
表面上は。
そう、真実は、深く、深く、眠ったまま。

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紙の本

紙の本あかんべえ

2002/07/03 00:07

不思議な力を持つ少女おりんが出会ったおばけさんたち。彼らの過去にあるものは?

0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

宮部みゆきの世界って、どうしてこんなに暖かいのでしょう。
幽霊がたくさん出てくる話なのに、なんだかほんわり優しくて。

料理屋「ふね屋」の1人娘おりん。
両親に、祖父母、店で働く人たちに囲まれて、
何不自由なく育った少女。
そんなおりんが、命に関わる大病の後、身につけた不思議な力。
それは、この世の者でない存在が見えるようになったこと。

素晴らしいのは、おりんが、幽霊を見て、
きゃーきゃー騒ぎ立てるだけの少女でなかったこと。
そんなおりんだからこそ、亡者たちも、見えるように
なったのかもしれませんが。

実に様々な亡者たちが、ふね屋に現れます。
色男優男な玄之介、なんとも艶っぽいおみつ。
おどろおどろなざんばら髪。
あかんべえの女の子。

彼らが、いったい、なにを思い残してふね屋に取り付いているのか、
それが分かれば成仏できるでしょうに。
だからと言って、調査に乗り出そうなんて、
たった7歳のなのに、おりんってば、なんて、まぁ。

でも、おりんにとって、もっと、切実な問題。
それは、幽霊騒動でふね屋の存続が危ぶまれていること。
それを支える、おりんにとっては祖父にあたる七兵衛。
このじいちゃん、なかなかどうして、たいした傑物。
孤児だったところを、拾われて仕込まれただけあって、
肝も据わっているし、妻おさきとのコンビネーション。
幽霊で評判になったなら、それを逆手にとってやれ、
なんて、なかなか言えることじゃないのでは。

生きている人も、そうでない人(?)も、
それぞれに、いろんな事情を抱えています。
だから、ある人にはおみつさんだけが見えて、
ある人にはざんばら髪だけが見えるのだという
その理由付けが、やけに説得力を持ってきます。

そして、過去の事件が見えてくるにつれ、
いっそう、その条件付けがいきてくる。

生きていく以上、出会いと分かれとからは、
誰だって、逃げることはできません。
おりんにとって、それは、初めて経験する
親しい人との別れでしょう。
でも、おりんなら、決して、悲しんでばかり
いるはずがありません。
彼女自身がしっかり前を見る力を持っている上に、
あんなに素敵な家族に囲まれているのですから。

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紙の本

紙の本鳥人計画

2002/07/01 20:53

大空にはばたく夢に実利が絡み…

0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

スキーが、ゲレンデを滑る感覚。
恐怖と紙一重のスピードで、ゲレンデを滑り降りる爽快感を知っています。
雪を蹴っていてさえそうなのです。
ジャンプ台から飛び出して空中を行くその開放感はどれほどのものでしょう。
トレーニングに次ぐトレーニング。
自らを鍛え上げ、スキルアップを目指し、1mでも、1cmで先へ。
1秒でも長く空中へ。

それが、組織の中に入り、組織を代表して飛ぶようになると、
そうはいかなくなってしまう。
純粋に自らの力で飛ぶだけではなくなってしまう。
なんて悲しいこと。
どんなことをしてでも、「人よりも」距離を伸ばすことが目的になってしまう。
自分自身をステップアップしての、「昨日の自分」が敵ではなく。
なぜ、なのでしょうね。
飛ぶことが好きだっただけなのに、才能にも恵まれていたがために、
純粋に飛ぶことが許されなくなってしまうなんて。

そんな中、そういう周囲の思惑を超えたところに存在している楡井。
他の追随を許さない天性のジャンプに対する感覚と、
他人の言葉に捕らわれない自由な心。
まさに「鳥人」の名に相応しいジャンパー。
あまりにも陽気であるがゆえに、何も考えていないようにさえ見えるその姿。
そこまで周囲の雑音をシャットアウトできなければ、
自分のために飛ぶことなどできないのでしょうか。

なのに、それが、その才能そのものが、彼に死をもたらしたとしか思えない状況。
せつないですね。
でも、いくら使いやすいからって、鍋を洗面器にするのはどうかと(笑)

作品の早い段階で、彼を殺害したのが彼のコーチである峰岸であることは
明らかになります。
分からないのは、その動機、そして方法。
どう考えても、彼にはアリバイがあり、犯行は不可能ななずなのに。
にもかかわらず、峰岸が警察に注目されたのは、1通の密告状のせい。
そして、その後の興味の半分は、「誰が」密告状を書いたのかに移ります。
それを、峰岸が必死で推理していきます。
なんて奇抜な設定。

そして、明らかになっていくコーチであり、かつては名ジャンパーでもあった
杉江泰介の持つ秘密。
なぜ、なぜ?
恐ろしい。
どうしてそんなことができるのか。
勝負が、何よりも大事なのでしょうか。

なんともやりきれない思いが残りました。
楽しいから、に勝負がからむって悲しいことです。

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紙の本

紙の本地下街の雨

2002/07/01 20:49

優しさあふれる宮部ワールド

2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

なんて優しいお話。
特に、表題作の「地下街の雨」
婚約者に裏切られ、仕事まで失った麻子。
失意のまま、ウェイトレスのアルバイトをしていた彼女の前に現れた、
似たような境遇にある曜子と知合ってから、事態は動き始めたのです。
そんな中で交わされる「地下街の雨」についての会話は、すごくセンスが
あって好きなシーンです。
それと、地下街の喫茶店は、外の風景が見えるわけでないのに、やっぱり
窓際の席に座ってしまうのって、なんだか、分かる気がするのです。
彼女が偶然見掛けた見覚えのあるネクタイ。
するべき人でない人がしているそのネクタイのその謎とは?
関わるべきでない人と関わってしまい、傷ついた麻子を待っていた
素敵な出会い。
心がほわほわ温かくなる素敵なお話です。
人生って、自分に見えるところだけではない。
自分と関わっている人が、自分に見えないところでも、生きているのだということ。
それが、事柄を、自分に見えないところで動かす事だって、よくあること。
忘れがちなことだけれど。
大切なこと。

それから、ついつい静かにガッツポーズの出そうなのが、「勝ち逃げ」。
亡くなった勝子の葬式で浮かび上がってくる誰もしらなかった勝子の過去。
すごくいやな、はっきり言って最低な夫婦も出てきます。
でも、勝子が、最後まで人には言わなかった過去。
そこに隠された勝子の深い思い。
そして、それを知ったときの、彼女の姉妹と姪っ子の反応。
これが、本当に温かい。
それだけでも、実際には登場しない勝子の人柄が忍ばれます。
自分自身が温かくなければ、周りの人間が彼女にそういう感情を持ったりは
しないはずなのですから。

ちょっとぞくっとする後味を残すのが、「決してみえない」と「不文律」
そして「混線」。
日常の陰に潜む恐怖。
だって、嘘でしょう? そんな…。
そうつぶやきたくなるような落とし穴の数々。
一見、なんでもなさそうにそこにあるから怖いのです。

特に、ぞっとするのが「ムクロバラ」。
デカ長のもとに通いつめる橋場の中に巣食うムクロバラの正体とは?
彼が言う「ムクロバラの事件」には、何か法則があるのか?
彼が書いたその似顔絵は、だって…。
ああ、そんなことがあるのでしょうか。
でも、それでも、ほんのささやかな救いがあれば、人は生きていけるはず。
きっと!

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紙の本

紙の本探偵はひとりぼっち

2002/07/01 20:47

すすきのをねじろにする何でも屋<俺>の孤独な戦い。

0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

<俺>のキャラが、なんともユニーク。
定職にはつかず、ギャンブルで儲けたり、便利屋のようなことをして毎日を過ごし、
夜は、行き付けのバー「ケラー」に。
友人は、北大の大学院に在籍する武道の得意な高田や、暴力団幹部の桐原。

意気に感じると、とことん突き進んじゃう。
周りに制止されても、事件に首をつっこんでは、危ない目にもあってしまう。
そういう奴だから、事件が政治家がらみらしくて、警察も触らぬ神にたたりなしに
なっちゃってる事件だって、放っておきません。
孤軍奮闘。四面楚歌。

夜の世界の住人たちが、活き活きしている世界でもあります。
バーテンや、呼び込み屋。ゲイバーの方たち。
札幌の、特にすすきのの風景も、さすが、実際に住んで書いていると違います。

被害者となってしまった「マサコちゃん」
素人のマジック・コンテストでの大活躍。
喜びの最中になんてこと。
もみ消されてはたまりません。

なぜ、捜査が消極的になったのかを調べたら、政治家がらみとあってはなおさら。
あらゆる方面から、妨害・襲撃を受けながらでも、手を引いたりしません。

そういう<俺>だから、ひとりぼっちに見えても、ちゃんと味方はついています。
もう、危機一髪というところを危うくすりぬけられるのは、そのおかげ。

無粋なかっこよさと言っていいかもしれません。

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紙の本

紙の本奪取 上

2002/07/01 20:44

偽札作りに燃える男たち、それを狙う悪党たちの駆け引き。

0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

なんとかして、「本当の」偽札を造ろうとする男たちの物語。
きっかけが、やくざに不当な借金を負わされたり、仲間がひどい目に
合わされたりしたところにあるせいもあってか、冒頭からの印象。
「これは、和製「スティング」だ!」

冒頭から、暴力団と手塚道郎の会話ににまにま。
そんな奴ら相手に、ひるむどころか、得意技を使って煙に巻いちゃうやり方、
なんてかっこいい!
この時点で、すでに道郎のファンになりました。
自動販売機から、外国コインで小銭をくすねて生きてるような小悪党なのに。
それでも、本当に、ものすごく魅力的。

そこに、力自慢・体力自慢の雅人。
正体不明のじいさん。
お転婆お嬢の幸緒。
みんな、ものすごく魅力的。

彼らが、パソコンや、それぞれの特技を活かして、徐々にバージョンアップした
偽札作りを目指す!
もちろん、これって、犯罪中の犯罪。
でも、気づいたら、せいいっぱい彼らを応援してるのですよね。
そのキャラの魅力はもちろん、悪辣な組織との闘いのためであるというところも
大きいでしょうね。
でも、何度も何度も壁にぶつかりながら、1つ1つ、彼らが難関をクリアしてい
く度に、こっちまで、「やったぁ!」って声をあげそうになりました。

終盤は、本を閉じることができなくなってしまいました。
とにかく最高です。

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紙の本

紙の本ターン

2002/07/01 20:40

くるりんに取り残されたヒロインの行方は?

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時の流れから取り残されて、自分だけが同じ1日を延々と繰り返すことに
なったとしたら?
しかも、正常な時を過ごす人は、どんどん先に行ってしまうから、
この世界には、ただ自分1人だけ。
自分以外の生き物の気配すらない。
ある日突然、そんな世界に放り込まれたとしたら?
孤独と絶望。
やりきれない思い。

何をしても、何を作っても、持ち時間は24時間。
ごご3時15分には、前の日の状態に戻ってしまうなんて。
そんな状況で、何をする気になれるというのでしょう。
自暴自棄になって、生きる気力だってなくしちゃいます。
自ら命を絶つことだって考えるでしょう。
究極の最後の手段。
でも、それでも、また元に戻っていることに気付いたら?
それを考えたら、怖くて試して見る気になんてなれないんです。
だって、それで失敗したら、永遠に時の牢獄に閉じ込められてしまったことを
認めるしかないのですから。

そこへ、奇跡のようにつながった「本来の」世界からの1本の電話。
その電話の主が、そんな突拍子もない話を信じてくれる保証なんてなくても、
それにすがる以外に道はないんです。

そして、明かになっていく驚くべき事実。
それは運命なのか?
約束の人と、そんな形で出会ってしまったのか?

真実の想いは、すべての障害を越えて蜘蛛の糸のように2人を結んだのでしょうか?
信じても、いい、のかな…。

何より大事なのは、希望を持って前に進もうとすることだから。

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紙の本

紙の本空飛ぶ馬

2002/06/30 08:58

円紫師匠と女子大生「私」のシリーズ1作目

1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

・織部の霊
「私」と円紫師匠の出会いが「夢解き」だったとは知りませんでした。
女子大生と大学教授と噺家の対談なんて、なかなかしゃれた企画ですね。
その中でひょいと飛び出た不思議な夢の話。
まるでつかみどころのない話のようなのに、円紫師匠にかかると、見事に
説明がついてしまうのが不思議。
しかも、それでいて、淡々としているのが円紫さんの魅力の1つ。
長年の謎が解決して、教授もさぞかしすっきりしたことでしょう。
それにしても、人間の育った環境とか血筋って、大きな意味を持つのですね。

・砂糖合戦
怖いですね。人間の考えることって。
喫茶店での女子大生とおぼしき3人組の謎の行動。
「私」が見た「マクベス」との関わり合いは?
マクベスについて、よく言われるのは、マクベス夫人が悪いということ。
でも、私には、彼女がどうしても悪人には思えなくて。
夫が、王になりたがっていて、そのチャンスを逃したら後悔するのが分かっていたから、
その背中を後押しし、それによって、罪に濡れた血で自らを追い詰めてしまう。
当の夫はあてにならない。
とても、弱くて悲しい人。
あの、不気味な3人の魔女なんかとは大違い。
人の弱みにつけ込んで、相手に陰惨なイメージを植え付けてしまうなんて。
あの悲劇は、魔女達のせいと言っても過言ではないかも。

・胡桃の中の鳥
仲良し2人娘のドライブ。
そのさなかに出会った不思議なできごと。
やっぱり、活躍するのは円紫師匠。
とにもかくにも、一安心。

・赤頭巾
人の心の中の醜悪さを、こんなふうに突き付けられると、なかなかつらい。
円紫さんが、「私」に真相を話すことをためらう気持ち、よく分かります。
おしゃべりなほくろおばさんなんて、事実に比べたら、まったく、可愛いモノです。
童話の赤頭巾にも、隠喩があるとは聞きますが、それがタイトルにきている意味が、
いやというほど分かってしまいました。

・空飛ぶ馬
こういう話を聞くと、本当にほっとします。
あの、赤頭巾の後では、なおさらのこと。
私のご近所の酒屋さんのロマンスが生きています。
保育園のクリスマス・パーティで、園児たちに贈られた木馬。
その木馬が、その夜、数時間だけ姿を消した?
そこにある、人間の優しさ、温かさ。
いやな奴もいるけれど、こういうことがあると、やっぱり、世の中、
まだ捨てたものじゃないと思えるのですよね。
お2人に幸あれ!

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紙の本

紙の本静寂の叫び 上

2002/06/30 08:51

聾学校の教師と生徒たちを人質にたてこもる凶悪犯たち。内からと外からの二手にわたる息詰まる交渉。

1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

彼らの乗ったバスが3人の凶悪犯に乗っ取られる。
閉鎖された工場に立てこもった彼らを投降させようと交渉するのは、FBIの
交渉のプロ。

そのポターと、立てこもり犯のリーダー、ハンディとの、息詰るような駆け引き。
相手の反応を読み、心理状態を分析し、要求を、あるものは飲み、あるものは
はねつける。そうやって、少しずつ人質を解放させようと必死の心理戦。

とにかく、もう、このハンディって男が、凶悪この上なし。
自分の思うようにならないというだけで、人を殺すことをなんとも思わない。
むしろ、殺されるようなことをするのが悪い、殺されて当たり前と思っている。
話しているうちに、ハンディのペースに巻き込まれそうになってしまうポター。

おまけに、なんとかスクープをものにしたいマスコミはやってくる。
地元の警察や、他の司法組織との軋轢。
何かと邪魔が入り、ハンディとの交渉だけにポターは専念できません。
おかげで、せっかく踏み固めた地歩を失ってしまったり…。

一筋縄でいかないハンディ相手に、必死で戦うポターの足を、
なんでひっぱるんだよ〜、と歯噛みしたい気分。
人質の命や、事件の解決よりも、自分の立場や面子を気にする奴らなんて、
ほんと、ろくでもない!

そうやって、工場の外で闘いが繰り広げられる一方、もちろんのこと、中でも
静かな闘いが繰り広げられています。
自分自身もポターや仲間たちに怯えながらも、生徒をなんとかして逃がそうと
頭を回転させる教育実習生のメラニー。
彼女は、ドゥ・レペ神父の存在を心の支えに、必死です。
聾者になってからの様々なできごと、葛藤を抱えながらも、闘います。
そんなとき、聞こえないということは、どれほど不安になることか…。
なのに、彼女は、やってのけます。
小さなものかもしれませんが、ハンディ相手にポイントを稼いだのです。
その強さ。その美しさ。
ポターは、ずっと、メラニーの存在を意識しながらハンディと交渉を
続けていきます。ほんの一瞬垣間見るだけで、その魂が彼に届いたかのように。

やがて、事態は急展開を見せます。
まさかと思うようなことが。
本当に、予想だにしませんでした。
まさか、そんな!
やられました。脱帽です。

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紙の本

紙の本スナーク狩り

2002/06/30 08:35

交差する哀しみの暴発。そこに巻き込まれた人々

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タイトルのスナークとは何か、最後まで分からずに読んでいました。
でも、哀しい、人の心って、あまりにも哀しいですね。
憎しみは、たとえそれが、どれほど正当なものであっても、
心を蝕んでしまう。

まず、慶子。
お金持ちで、甘やかされた少女。
人と付き合ったらいいのかがうまく分からずに、安易な方法に頼ってしまい、
それを、1番傷付く方法で利用された彼女。
その傷を治す方法なんて見付からない。
散弾銃を持って、彼の結婚式に乗り込む以外には。

織口邦男。
慶子が銃を持っていることを知り、自らの計画のためにそれを奪っていった男。
なんのために?

そんな2人のために、車を走らせる若い男女。
2人は、織口に追いつくことができるのか?

司法制度では、裁けない罪がある。
それを逆手に取る奴がいる。
そんな風にして傷付けられた人の心は、どうやって癒されればいいのでしょう。
「私刑」、「私的な復讐」が正しいとは思いません。
でも、そういう方法でしか裁くことのできない悪人を、
野放しにしていいのでしょうか。

もちろん、犯人を殺したからといって、踏みにじられたものが元に戻りはしません。
失われたものが帰ってはきません。
でも、そいつが、のうのうと生きていくことに、どうして被害者が
耐えなくてはならないのでしょう。
なのに、どす黒い憎しみに心をゆだねることは、自らの心のある部分を
失ってしまうことだなんて、あんまりです。

慶子と織口の、交差する悲しみ。
思いがけずそこに行き合わせた神谷親子。
深夜の車内での思い掛けない打ち明け話。
言葉を失った幼い少年の心の傷を思うと、胸が痛みます。
彼らの存在が、せめてもの救い。
小さな灯りのように、希望を灯してくれます。
憎しみに突き動かされた他の人たちも、それを乗り越えて、
強く生きていってくれるようにと。

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紙の本

紙の本ステップファザー・ステップ

2002/06/30 08:32

けなげな双子と泥棒さんで繰り広げるほのぼの宮部ワールド

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W不倫の両親がそれぞれ不倫相手と駆け落ちして取り残された中学生の双子、
宗野直と哲。
ものすごく悲惨な状況のはずなのに、彼らは、さばさばしています。
両親には、好きに生きてもらいたいから。
なんて、まぁ。
でも、よそに引取られたり、大人に自分たちの生活に干渉されるのはまっぴら。
そんな彼らのところに、天から助けが降ってきます。
はい、それは、もう、文字通りの意味で(笑)

それは、ある日、重力に従ってやってきた泥棒さん(笑)
2人が泥棒に持ちかけた(脅迫した?(笑))提案は、彼らの保護者となって
ほしいということ。
そうして、不思議な3人の組合せは、次々事件を解決していくのです!

双子たちは可愛くて、いじらしい。
最初は、好きでやっていたのではない泥棒さんも、なんとはなしに、
自分の役割に馴染んで行くのもよく分かります。
事件は、けっこう、殺伐としたものなのに、宮部みゆきが書くと、
なんとはなしにほのぼのして見えるのが不思議。
それに、それぞれについたタイトルも、なんだかリズムが感じられて
いいのですよね。

この、にわかづくりの家族。
世間的には、こういう関係は、家族とは言わないのでしょうね。
でも、でも、不倫相手と駆け落ちして子供を捨てて行く親よりも、
きっかけはなんであれ、泥棒さんのほうが、彼らにとっては「親」なのです。
彼らは、もしかしなくても、そこらの家族に負けないぐらい、家族。
大事なのは、血のつながりでも、一緒にいた時間の長さでもないのです。
短い時間でも、分かり合うものがあるほうが大事。
言葉にしなくても。
ずっとは続かないと分かっていても、いえ、それだからこそ、大事。

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