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kotoさんのレビュー一覧

投稿者:koto

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紙の本魔法使いとリリス

2003/12/26 01:07

ありのままを愛することの難しさ

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世界一の変身術師グライレンドンに弟子入りした若者オーブリー。弟子はとらないことで有名なグライレンドンの館を訪れると、そこにはグライレンドンの妻リリスと、人間らしくない風変わりな使用人たちがいた。館で魔法使いの弟子として暮らすうち、オーブリーは不思議な魅力を放つ緑の瞳のリリスにどんどん惹かれていく。しかしリリスは“愛”とか“友情”といった感情をどうしても理解できないらしい。もちろん、夫のことは愛していないし、好意を示す男たちにも冷たい反応。それなのに、なぜか夫の元にとどまっている彼女には、秘密があった——。「魔法使いの弟子系ファンタジー」という言葉があるとするならば、その典型。リリスの秘密というのが、お約束といえばお約束で、読者はかなり早くから勘づいてしまう。物語世界そのものも、大仰な世界観に支配されているというよりは、おとぎ話といったやわらかめの雰囲気。魔法の原理がどうのなどとあまり考えずに、「魔法のある世界」として軽く読み進められる。一歩間違えば読むのも退屈な設定のはずなのに、後半部ではいつしか引き込まれる。主人公の思いやり深く誠実で一途な性格の勝利かもしれない。愛するリリスのために、「リリスの正体」そのものを愛せるように、オーブリーは彼自身の体を魔法の実験台にしていく。
リリスの造詣は、最初退屈に思われたが、とにかく最初のうち彼女があまりにそっけなく冷たいが故に、後半ではわずかな変化にもどきどきさせられる。

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