bossaさんのレビュー一覧
投稿者:bossa
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紙の本二度目の破滅
2002/01/06 20:21
魅力あふれる主人公
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サニー・ランドルシリーズの2作目であるが、前作にもましてサニーの魅力があふれているような気がする。その魅力とは、…。著者の他作品の主人公たち、スペンサーやジェッシイ・ストーンにも共通していえることだが、とにかく「骨太な生き方」をしていることである。どんな苦境に立たされたとしても、自分自身を見失わず、自分の生き方に忠実に対処する。たとえ、クライアントがなんと言おうと、自分の信念は守り通す。こんなハードボイルドな女がこの世にいるんだろうか? と、ふと考えてしまう。
がしかし、骨太なだけじゃない。大学で美術を専攻し自ら絵筆をとるという、スペンサーやジェッシイには出来ないことをやってのける、繊細にして大胆な女性なのである。そして、彼女を取り巻く姉や友人は、いかにも巷の女性らしい男女間・家族間の悩みを抱えて彼女に相談し喧嘩もしたりする。そのようにハードボイルドに徹するのではなく、ありきたりな女性の世界を描き、そのような環境にサニーを置くことにより、一層彼女の魅力が光ってくるのである。
また、スパイクやリッチーなどの男性も充分に魅力的に描かれている。これらの男性の生き方もスペンサーに通じるものがあり、役どころとしても脇役としてしっかりとサニーを支えており、ストーリーの展開になくてはならない存在になっている。そして、スペンサーシリーズに登場するトニイ・マーカスが前作に続き登場するなど、スペンサーファンにとっても魅力ある作品である。そのうち、有能なセラピストとしてスーザンが登場したりするのかな? などと思ってみたりもするのである。
とにもかくにも、男であれ女であれ、自立した人間というのは魅力的であり、目が離せないのである。
紙の本墓標の森
2002/01/06 21:12
芳醇な文章に酔ってしまう
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著者の前作「狼は瞑らない」を読み、本書にはずいぶんと期待をして手に取った。そして読み始めたとたん「これって、ホラーサスペンスか?」と思わせるような展開がいきなり始まる。これには参ってしまった。しかし、読み進むにしたがい「こりゃやばいかも…」と思うようになった。なにがやばいかというと、ページをめくる手が止まらないのである。あっというまにハマってしまったのである。
八ヶ岳山麓の小さな村で、何人もの人が自殺・他殺を問わず死んでいく展開には多少の無理があるとは思うが、「次はどうなるの? どうなっていくの?」と読み手に期待感を抱かせる展開はさすがである。そして、文章が芳醇である。緑の木々の香り、風の冷たさ、雪の白さや手触り、岩の感触、フライラインが風を切る音、文中に登場する事柄全てが実際に伝わってくるような感じであり、丁寧に言葉を選んで書かれているのが良くわかるのである。そして著者が自然を愛し大切にしている様子が痛いように分かるのである。
特に、主人公の進藤光彦が友人である城崎の死因を調べるため、ひとり黒谷に入ったあとの、彼を取り巻く自然の描写や夢とも幻影ともいえない状況の描写など、まるで映画を見ているようであり怖ささえ感じたものである。また、彼を含め沢木や野々村などの脇役陣も極めて個性的で、男としての生き方にこだわりを持っているところなど、共感できる部分も多く、それがこの小説の魅力にもなっている。
本帯には「樋口明雄は冒険小説の王道を往く」とあるが、まさしくその通りであり、一級品の作品といえるのではないだろうか。
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