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PAN!RIGHT!さんのレビュー一覧

投稿者:PAN!RIGHT!

1 件中 1 件~ 1 件を表示

紙の本ベンドシニスター

2002/11/22 17:31

マンホールを開けるとタイムマシンが

1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

1)ナボコフというひと、どうも私の高校時代の生物教師とダブルのである。
その教師は親に家を建ててもらい、ほとんどの時間を昆虫採集に費やす
趣味人であったが、その人生を軽やかに切り抜けてゆくそぶりとは別に
きわめて保守的な人でもあった。
 ナボコフの短編小説は、チェホフやハーディふうとでもいうか、人生を
シニカルに美しく描いたもの、あるいはブラッドベリの「たんぽぽのお酒」
ふうの装飾的でファンタジックな作品が目立つのだが、長編となるとまた
別の特徴が現れてくる。
ぞっこん「ドンキホーテ」! 「ゴーゴリ」! あるいは「ハムレット」!と叫び
趣味は良く教養もある素適なおじさん、けど淋しがりやなんだよ(と自負す
るところの)作者自身が投影された主人公が登場し、破滅してゆく。
サルトルをして「ナボコフは自意識過剰」と言わしめた、現代人的な自己偏愛の
小説群。
小説の末尾に設けられた作者による自作品の解説によってさらに読者は煙を
まかれるといったあんばい。
彼の「ドンキホーテ講義」も「ニコライ・ゴーゴリ」もやりすぎの自作を証明する
ための弁解のように思える。
ナボコフは自信あふれる恥ずかしがりやなのである。

2)マンホールを開けるとタイムマシーンが…
本当はたとえばカフェのウィンドウにちらちら反射する赤い路面電車や、深夜のタク
シーに乗った自分の腕時計の文字盤の上を通り過ぎてゆく街頭の光や、目の端にちら
ちら進入してくる虹色のハトといった修辞のうまさを読者に驚いて欲しいのかもしれ
ない。現代小説にとってそれこそが大事なのである、と。
この「ベンドシニスター」は
主人公を押さえつけようとしている全体国家の独裁者が実は高校時代のクラスメート
で、という少年マンガのようなウソっぽい設定でありながら、その確かなリアリティ
の技術によって確実に引きこまれる。運と才能のある人にはかないませんナ、という
とこか!?

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