yo_423さんのレビュー一覧
投稿者:yo_423
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紙の本買って得するクルマ損するクルマ 2002年版 新車購入全371台徹底ガイド
2002/03/20 11:07
500円の先行投資
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この本は、現在発売されている新車の中から、「買って得するクルマ」60台と「買って損するクルマ」40台を取り上げて評価するもの。見開き2ページで1台の評価って感じで構成されているから、とても読みやすい。
さて、この本の長所は以下の2つ。1つは、とても率直な評価がされているところ。このテーマのベストセラーっていうと、『間違いだらけのクルマ選び』シリーズを思い出すけれど、評価の率直さや辛らつさでは勝るとも劣らない。この著者のほうが若いぶん、若い読者の価値観には合っているんじゃないだろうか。
どの業界でもそうだと思うが、取材するメーカーに遠慮もあるから、普通は悪口は書きにくいものだろう。ところがこの本は、「カローラ」だろうが「ヴィッツ」だろうが、実際に乗って悪いと感じたらけなすけなす。で、また、そのけなしかたにも芸があって笑わせてくれる(そのクルマを持ってる人は笑えないと思うけど)。
もう1つは、クルマを評価するときに結構バランスがとれていること。コンパクトカーからスポーティカーまで、クルマにはそれぞれの用途と性能があるわけで、その辺をきちんと踏まえた上で評価しているんだと思う(ただ、若干「走り屋」系のクルマの評価が甘い)。だから、実用的なクルマが欲しい人から、「走り」にこだわりたい人まで、幅広く役に立つだろう。
反対に短所は、著者の評価の基準がいまいちよくわからないところ。これは上で述べたバランスのよさと裏腹なんだけれども、著者自身こう言っている。「いいクルマとそうでないクルマの違いを簡単に説明することは、少なくとも私には上手くできない。(中略)運転しやすさや快適さとはなにかときかれたら『えーと……』とつまらざるをえない」。
そして著者は、いいクルマに乗ればダメなクルマは自ずとわかる、みたいな言い方を何回もするけど、普通の読者はそんなにいろんなクルマに試乗できないし、したいとも思わないだろう。もちろんこの本の売りは「独断と偏見」だし、それでいいんだけれど、読んでいるこちらとしては、どこまで信じていいのかな、と思ってしまう。
ついでに、著者はしきりと外国産車をほめるんだけど、それってどうなんだろう。著者がけなしている「ヴィッツ」は欧州カー・オブ・ザ・イヤーに選ばれたんじゃなかったっけ?
とはいえ、基本的に上であげたマイナスは小さなものだ。この本は読んでも楽しいし、バイヤーズガイドとしてもよくできていると思う。少なくとも、クルマみたいな大きい買い物をするときに、これだけの情報が500円で手に入るなら、これはもうかなり割のいい先行投資だろう。
紙の本日本の神々と仏 信仰の起源と系譜をたどる宗教民俗学
2002/03/25 19:28
素人による素人のための宗教ガイド
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この本は、日本の神道と仏教について、民俗学的な観点からわかりやすく説明するもの。まず、日本人の宗教的な性格について解説したあと、神道、仏教の順にとりあげ、最後に寺社ガイドのようなものをまとめている。
この本の長所は、問題設定の仕方が身近で、とてもわかりやすいこと。例えば第三章の「日本の神々と神道」の章を見てみよう。節見出しを引用すると、「神に仕える人々/参拝の作法/暮らしの中の神々/『ハレ』と『ケ』」となっている。「古事記、日本書紀の成立事情」とか、「平田篤胤の思想」とか、「国家神道の歴史的役割」みたいなものは一切書かれていない。
そもそも、そういう思想的なややこしいことはおいといて、ふだん何気なく拝んでいる神様とか、仏様についてちょっと知っておこうというのがこの本なのだ。「七福神ってどういう神様?」とか、「節分のもともとの意味」とか、「どの神社に、どんなご利益があるか」(笑)なんてことは、普通知らないけど、ちょっと知っておきたいと思うだろう。そういう面白そうなトピックがこの本には詰まっている。私も、「本来おみくじを枝に結ぶのは、その神社の神が『縁結びの神』だった場合だけ」などという記述を読んで、へえーと感心させられた。
このような長所は、おそらくこの本の著者が(宗教学的に)素人であることからくるものだと思う。もちろん監修の岩井宏實さんは専門の学者だけれども、巻末の著作権表記を見ると「Banyu-sha」となっていて、これってたしか編集プロダクションだ。素人が書いているからこそ、素人が知りたいこと、素人が面白いと思うことについて、よくポイントが押さえられているのだろう。
と同時に、この本の欠点もそこにある。記述が平板で、食い足りない部分があるのだ。特に、民俗学者から聞き書きをしたせいか、民間信仰の説明は丁寧でわかりやすい反面、宗教学的な面には弱い。例えば、仏教の様々な宗派について簡単に紹介する部分で、「天台宗の密教を台密という」、「真言密教を東密という」という記述が出てくるが、その両者がどう違うのかはまったく触れられない。この本ではいろいろな神仏や宗派が取り上げられているが、それぞれの宗派の持つ世界観や、それがどう広まっていったのか(広まらなかったのか)について、もう少し詳しく述べてほしかった。
とはいえ、これはないものねだりかもしれない。実際この本は読んでいてとても面白く、限りあるスペースで、民間信仰のバックグラウンドまでよく盛り込んである。これより上のレベルを求める人は、文句を言わないで別の本を買えばいい。
現在、『陰陽師』などのブームで、民俗学的なものに注目が集まっている。そんな中で、この本は、日本の宗教を知るための手軽なガイドブックだと言える。
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