松浦 晋也さんのレビュー一覧
投稿者:松浦 晋也
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2006/07/18 14:37
昨日と同じ今日はなく、今日と同じ明日はない
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成功の絶頂に没落は始まっている。没落のどん底は、同時に成功に向けた最初の一歩を踏み出すべき時だが、本当に踏み出せるかどうかは、当事者の意志と能力にかかっている。
1980年代、成功の絶頂にあった日本の半導体業界は、1990年代を通じて退却に次ぐ退却を重ねた。
今日の次に今日と同じ明日がある保証はない。当たり前のことだが、1990年代の半導体業界には、それが分からなかった。
1990年代、半導体業界の状況は変化し、シリコンサイクルと呼ばれる景気変動のサイクルはぐっと短くなった。ところが日本の半導体メーカーは、過去はこうだった。今日はこうだから、明日はこうなるに違いないと考え、判断ミスを繰り返した。韓国や台湾の半導体メーカーに追いつかれ、突き放され、赤字を垂れ流
すこととなった。
「昨日と同じ今日はなく、今日と同じ明日はない」——エルピーダ・メモリーの坂本幸雄社長にインタビューしつつ頭の中を去来したのは、こんな言葉だった。
本書を書き終えた今、坂本氏の言いたかったことは、今を読み、徹底的に今を生きるということではないか、と思う。
それは不確実な世界を生きるということだが、考えてみれば、未来が不確実でなかったことが過去に一度でもあったろうか。「確かな明日」というものは常に幻だ。
しかし、能力と意志があれば「明日への見通し」は作ることができる。意志をもって能力を真っ当につかうなら、今日を生きることで未来を作ることができる。
坂本社長が語ったことは、つまるところ「真っ当に生きるとはどういうことか」ということなのかも知れない。
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