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ヒデオさんのレビュー一覧

投稿者:ヒデオ

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紙の本

紙の本さよなら妖精

2004/06/21 22:22

青春に別れを告げる小説が青春小説である

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 人生には必ず、迷い、何かを捨て、何かを選び、選択しなければならない時期がある。この物語の主人公・守屋少年(高校生を青年と形容するにはまだ早いだろう)もその例外ではない。物語は、彼が異国の少女・マーヤと出会うところから始まる。帯に「ボーイ・ミーツ・ガール・ミステリ」とあるが、まさしくその通り。少年と少女が出会い、そして彼らと物語は動き始める。

 ボーイ・ミーツ・ガール。Boy meets girl.少年と少女の出会い(そして別れ)の物語は数多く、それこそ何百何千、あるいは何万とあるかもしれない。このモチーフが数多く用いられる理由はおそらく、少年と少女の出会いが人間にとって初めての「他者」との接触だからだろう。少年(=少女)は少女(=少年)を通して、自分以外の人間に「内部世界」があることを知る。人はその世界に憧れながら、その世界に傷つきながら、次第に世界の広さを知っていく。
 
 ティーンエイジャーという言葉があるが、それを乱暴にひと括りにすると、「他者を知らない、特殊な時間」と言える。霞がかった、茫洋とした時期であり、世界が見えず、すべてが漠然としている。周囲のものに手触りがないといったら良いだろうか。それは、本当はあらゆる可能性を秘めていることの裏返しなのだが、先の見えないことは不安なのだ。だからこそ、少年は他者を知ろうとし、世界を知ろうとする。守屋少年にとって、マーヤこそがそれだった。世界とは他者の別名であり、他者とは世界の別名である。

 この物語は出会いで始まり、別れで終わる。ただ、守屋少年が別れを告げたものはひとつではない。高校時代という特殊な時間、そして、「それまでの自分」にも彼は別れを告げる。マーヤを通して知った世界に触れたことで、彼の内部世界も変質し、以前の自分でいることができなくなったとも言えるかもしれない。それは誰かの手に守られていた自分への決別でもある。彼は保護されていることから自由になり、自らの手で直接現実に触れることができるようになった。しかし、その代償は大きく、ラストは痛切だ。胸が痛い。ただ、それでも彼は顔を上げて前を見据える。“妖精”に別れを告げた彼は、確実に、自分の人生に手ごたえを掴んだ。うつむき隠す瞳の先の世界に、彼は確かに歩みだした。

 本書はひとりの少年の心に寄り添い、その成長の瞬間を見事に描き切った青春小説の傑作である。

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