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みなまたこさんのレビュー一覧

投稿者:みなまたこ

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紙の本

水俣が「白黒写真」から「カラー動画」に変化する一冊

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 2002年の秋まで、私にとって水俣病は「白黒写真」の世界での出来事だった。探求の授業で、自分自身がそのように「歴史」としか考えられない「水俣」をどうやって生徒に主体的に考えさせるというのだ。まさに手探りで、インターネットで「水俣」という検索をかけて様々なページを開いて見た。「水俣」は色々なアピールをしていた。
 それでも私は思った。「神戸の震災も、1年ほど経ったら『いつまで震災震災と言っているんだ』と言う人がいた。激震地に住んでいた私は、実家が全壊、前日元気に話をした隣人、就職が決まったと喜んで年賀状をくれた後輩も亡くなってしまったという記憶が生々しい。だが電車で1時間あれば行ける距離の人にでも、1年もすれば共感されなくなる。遠い九州で何十年も前に起こった場所のことを生徒たちにどう伝えろというのか、『水俣に行ってこの目で見たい』という気持ちになるアプローチ方法などあるのか?」
 しかし遂に、インターネットを自在に操る…つまりおそらくは「若い」世代と思われ、しかも関西在住の人を見つけた。その人こそが著者、山中氏である。ここの書評に掲載されている軽妙な文章にまず心惹かれた。文の面白さと「関西に水俣の人がいる」と言う事がまず第一に私の感じていた「距離」を取り除いた。
 この『新・水俣まんだら』との巡り会いは、まさに運命的な「出逢い」となった。今では「山中氏」と呼ぶ事に抵抗があるほど親しくなった「由紀ちゃん」は私よりも若い女性で大阪出身、彼女がなぜ水俣とそんなに深く関わるようになったのか、それが分かればきっと生徒たちにも「水俣」が近くに感じられるはずだ…そう思った私は、幾度も彼女にメールを送って、アドバイスを貰い、有り難いことに直接生徒に語って貰う機会を得た。
歴史の中の事のように感じていた「水俣病」が、今、関西に存在して、つい最近『新・水俣まんだら』という本が出版され、その著者が今まで知った誰より若い…という事実だけでも生徒たちの興味が一気に高まった。「水俣の魚はね、本当に美味しいよ」「知らないから怖いだけ、知ったら怖くない。家族が病気に罹ったら、その病気を怖がらないけれど、知らない病気だと怖いと思う気持ち、分かるよね」深く頷く生徒たちの目は今までと違っていた。「白黒写真」で見ていたものが、「カラーの動画」になって現れたように、「水俣病」が「歴史」から「現在」に変化したのである。
 「水俣病は終わっていない」…先日、最高裁判決が下ったが、この本に接していた生徒たちはその判決が「行政責任が認められた」と言っても全員そろって万歳できなかった判決である事にまで目を向けた。あの本に出てきた原告の人が涙を流している。「水俣」で生まれ育ったわけではない由紀ちゃんが「水俣」を語る姿が生徒たちに大きな影響を与えたのだ。歴史の過ちを質すことが「他人事」ではないという感覚を、今後も忘れないで欲しいと思う。そのきっかけになる、とても素晴らしい一冊である。
  ーーーー『甲南女子中高等学校2004年度研究紀要』の文章を一部改めて投稿しました。
 

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