サイト内検索

詳細検索

ヘルプ

セーフサーチについて

性的・暴力的に過激な表現が含まれる作品の表示を調整できる機能です。
ご利用当初は「セーフサーチ」が「ON」に設定されており、性的・暴力的に過激な表現が含まれる作品の表示が制限されています。
全ての作品を表示するためには「OFF」にしてご覧ください。
※セーフサーチを「OFF」にすると、アダルト認証ページで「はい」を選択した状態になります。
※セーフサーチを「OFF」から「ON」に戻すと、次ページの表示もしくはページ更新後に認証が入ります。

  1. hontoトップ
  2. レビュー
  3. 中堅さんのレビュー一覧

中堅さんのレビュー一覧

投稿者:中堅

32 件中 31 件~ 32 件を表示

紙の本ソークラテースの弁明・クリトーン・パイドーン

2004/02/22 14:22

ソクラテスを批判したいと思って、書き始めた書評だったが……。

1人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

 ニーチェはその著作「偶像の黄昏」で、ソクラテスを激しく非難している。彼は、だいたい以下のようなことをいった。
「ソクラテスは、ギリシャ退廃の元凶である。胸のむかつくような容姿の醜さに悩んでいた彼は、何か突飛なことをいうことによってしか美しい青年たちを自分にひきつけることができなかった。それがつまり、彼の弁証法である。それは誘惑の方法でしかなかった。」
 また、プラトン自身も、その著作「ゴルギアス」の中でカリクレスにソクラテスへこういわせている。
「<詭弁で人をやりこめるようなことは、もうやめたまえ>。そなたの習うべきムゥサ(ミューズ)の技芸は実務のそれ。そなたの習いはげむべきは、そなたの誉れを高からしめるようなことがら。<いまのような、そんな気のきいたふうなことは、他の人々にまかせるがよい>
それを馬鹿話と呼ぶべきにせよ、たわごとと呼ぶべきにせよ、<そんなことをしていれば、いずれ、そなたの住む家は空っぽになってしまうだろうに>」

 彼の対話にはいわゆる「ソクラテス的な」アイロニーが満ちている。それは彼の現実の社会に対する軽蔑から発しているものだ。「ソクラテスの弁明」においても、裁判官(民衆)に対しての彼の軽蔑が不遜な態度として出たために、彼は死刑を受けなければならなかった。
 彼には毒があるのだ。現世の全てを否定し去るような毒が。ニーチェもカリクレスも、その毒に怯えた。(しかし、その一方で、ニーチェは「ソクラテスは私に似ている」ともいったのだが。)

 普通の人は、空想に走り勝ちな理性を自分の生活経験で押さえつけて、実践と理性の二つを調和させる。
 だが、ソクラテスは、理性の導くところにどこまでもついていった。つまり、理性が行くところにどこまでも実践が付いて行った。倫理の相対主義による価値観の混乱、淫蕩の蔓延するギリシア社会において彼は、理性の光だけをたより力強く生きた。全てを否定し去るエネルギーを抱えて。
 ソクラテスは、私にいう。
「君は、なぜ突き詰めないのかね? 君は君が正しいとおもうところを実行せずに、日々の怠惰な生活に沈み込む一方ではないか。論理とは突き詰めるものだよ。
 君はきっと死ぬとき後悔するだろうよ。正しいことをしなかった魂には、死後の苦しみが待っているのだから。
 おお、そんなに怒らないでおくれ。
 私が間違っていたら謝るよ。『間違って』いたらね。」

 全く、この変人は、私を怠惰な生活の中に眠らしておいてくれない。本当に、いい迷惑だ。

------
 テキストは、なんといっても世界の名著6の「プラトン1」が一番なのだが、あまり在庫がなさそうだし、プラトンの毒に耐えきれるひとと耐えきれないひとがいるかも知れないので、「とりあえず」、新潮文庫「ソークラテースの弁明・クリトーン・パイドーン」をお勧めする。
 新潮文庫に入っている三作はつながりがあるので、一気に読んで欲しい。

このレビューは役に立ちましたか? はい いいえ

報告する

紙の本坊っちゃん 改版

2004/02/21 03:09

漱石は新しい

0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

 大江健三郎の「小説の経験」の中に、「『今』もっとも重要な小説家はだれか」という外国人の質問に「夏目漱石です」と答えるところがある。
何かと新しいことで純文学を騒がす大江氏が、
今から百三十年ほど前の文豪を今なにより勧めるということに驚いた。そして、日本文学を全然読んでない自分に気が付いて、とりあえず「坊っちゃん」を読んでみることにした。

 ぼっちゃんは面白い人間である。
江戸っ子で情味があり、エゴイズムとは対極の正義の人で、芸術は解さないが、生活を愛する。何より単純である。滑稽ではあるが、愛すべき人である。
「まれにみるバカ」とはこの人のことだろう。
四国、松山の中学校に赴任し、赴任の次の日に東京に帰ろうと思ったり、宿直をしたら、生徒にバッタを布団の中に入れられたり、生徒同士のケンカには止めに入って、自分もケンカをはじめたり、悪人の教頭の罠にはめられると、不正の現場を押さえて、ぽこぽこなぐってから辞めたりする。

この小説は全体として、「爽快」「痛快」だが、「何か」を読む人に残すだろう。多分、それは少しの「不安」だ。その原因は何かと読み返してみれば、坊ちゃん的なものは明らかに日本人的な人間で、教頭の「赤シャツ」は西洋的な人間と見られることに気づく。
坊っちゃんが教頭に勝てずに自ら学校を去った最後は、なんだか、日本人の心の象徴に思えて仕方がない。「単純や真率が笑われる世の中」に愛想をつかしたぼっちゃんは、戻ってくるだろうか。……小難しいことを書いていると、ぼっちゃんに怒られそうだが。

百四十ページほどの中篇小説なので、取り組みやすいだろう。また、テキストは表紙がほのぼのとしていていい味を出していると思う角川文庫を独断と偏見をはばからず私は勧める。値段も安い。

このレビューは役に立ちましたか? はい いいえ

報告する

32 件中 31 件~ 32 件を表示
×

hontoからおトクな情報をお届けします!

割引きクーポンや人気の特集ページ、ほしい本の値下げ情報などをプッシュ通知でいち早くお届けします。