小山博之さんのレビュー一覧
投稿者:小山博之
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紙の本ビジネスモデル特許戦略
2000/11/07 00:15
ケースで学ぶ経営者の特許戦略
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タイトルにビジネスモデルとあるが、ビジネスモデルだけでなく、広く特許全般について、企業戦略にどう取り込んだらいいかを、米国における成功と失敗のケースをもとに解説している。著者によれば、特許はこれまでのように「判定を下さないよう教育された」法律部門に任せておくのではなく、トップ自ら戦略立案の有力な武器として使いこなさなければ企業間競争を勝ち抜けないと警告する。
そのためにまず、事業部門ごとの成長率を縦軸に、特許の利用計画の有無を横軸にとり、保有する特許をあてはめた「特許マップ」を作成し、特許資産の大きさと強みを把握することを勧める。これに基づき、事業により、成長、修正、売却のいずれの戦略をとるかをトップは決断せよという。
米国企業はどこも特許に敏感だと思いがちだが、本書を読むと、ゼネラル・エレクトリックやマイクロソフトのような有力企業も特許戦略に失敗して初めてその重要性に気付いたことが分かり興味深い。
米国ではいまビジネスモデル特許が相次いで成立し、ネットビジネスの発展を阻害するのではないかとの危機感も生まれている。そこでこんな例えがよく使われる。「高性能のネズミ捕り器ではなく、ネズミを捕らえるという単なるアイデアで特許を取得できるものなのか」。しかし、著者はこの比喩は間違っているという。ネズミを捕らえるというアイデアにはなんら新規性がないからビジネスモデル特許とは根本的に異なるというのである。
ビジネスモデル特許への抵抗に対して、かつてのソフトウエア特許やバイオ特許への反発の例を引きながら「このような新種の特許はすべて、科学的発見と進歩に有害であると批判されたが、実際には発見と進歩に貢献している」と指摘する。ただ、著者も米国特許商標庁のスタッフ不足と経験の浅さが新規性のない「不適正特許」を急増させていることは認めている。日本企業としても気になるところである。
本書の原題を直訳すると「屋根裏部屋のレンブランド」。特許をレンブランドの名画にたとえ、ほこりを被って放置されているのを嘆いたものである。IT時代の幕開けを機に、名画の価値を見直すための指南書として役立つが、ケースが深く掘り下げるのではなく、やや散漫に言及されているので、よく知らない業種や企業の場合、多少、分かりにくさが残るかもしれない。
(C) 日本経済研究センター
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