林 純次さんのレビュー一覧
投稿者:林 純次
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2001/02/23 00:16
より快適な毎日を送るためには,観念や世間体にとらわれず体の気持ちを重要視するべきである
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整体師である著者は,自身の治療経験から肉体に焦点を当てた考え方をして,人生をもっと楽しいものに変えようと訴える。
たとえば,いじめについて,体レベルではあって当たり前で,いじめられたら喜ぶべき,と述べている。精子が卵子を目指すとき,他の精子と争い合って「生」を目指す。たとえ同時にたどり着いても,卵子はどちらか一方にしか入口を開かないといったこともある。つまり生きている人は皆,ほかを蹴落としているといえるのである。
一方で,いじめられている側は生物的に整っている場合が多く,いじめている側は肉体的に弱っていることが多い。だから予防線としてのいじめを選択するのだという。したがって喜ぶべきことといえるのだ。文章が平易で文章量も多すぎない上,可愛いイラストがふんだんに盛り込まれていて非常に読みやすい。育児に悩む両親から,いじめや介護問題を抱える人々に読んでもらいたい。
(C) ブッククレビュー社 2000
紙の本仏教医学の道を探る
2000/12/28 12:15
仏教の根底思想と医療は非常に近く,釈迦はその思想を重要視した。仏教と共に伝搬していく医学の道を追う
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同書では『仏教医学』を仏教に関連して行われている医療活動及び,仏教と接点がある医学と定義しており,仏教と医学の関係の歴史や伝搬過程における変遷の仕方から,具体的な医療方法,薬品まで詳細に記している。
始祖・釈迦はその行を続け,悟りを開くためには心身の健康が必要だと感じていた。その思想は医学の根本思想に,とても近いものだと言える。釈迦が仏教を興した当時,既にインドの伝統医学である『アーユルヴェーダ』は体系化が進み,病苦や老いに対する予防,治療方法が相当研究されていた。釈迦もまたアーユルヴェーダを学び,ジーヴャカ(老婆)のような名医を身近に置いていたと伝えられている。
釈迦の思想に呼応するように,この医術は仏教の伝搬とともに各地に伝えられていく。そして,地理的条件や地元医学との融合などからその形を変えていった。
蔵伝仏教は7世紀頃チベットに伝わり,その医療形態はチベット医学に,さらに16世紀頃北上してモンゴル医学となる。
漢伝仏教は,シルクロードなどを経て中国に伝わるが中国医学と融合していく。これは後に遣唐使により大乗仏教として,日本にも伝わることとなる。その頃もたらされた薬物は,正倉院薬物として現存しているという。
また,アーユルヴェーダの治療法や薬法は日本最古の医書『医心方』にも引用されている。
南伝仏教は紀元前3世紀ごろ東南アジア諸国に伝わり,医療形態はタイ古医学やインドネシアのジャムウ薬物に変容していく。スリランカでは今日でも,アーユルヴェーダが変容せずそのまま受け入れられているところもあるという。
同書は数年間にわたる調査と膨大な量の資料に裏打ちされている。それは学術書としての説得力,クオリティーの高さに直結していると感じられた。
(C) ブッククレビュー社 2000
2000/12/28 12:15
現代日本社会の介護事情はどのような状況なのか?介護にかかわる人々の本音はどんなものなのか
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本書はその題名通り介護の現場にある現実を,余すところなく伝えている。一元的な視点で被介護者がどのような状況下にあり,どれだけ悲惨かといったことだけを伝える,お涙頂戴の内容にとどまってはいない。
介護者,看護婦,医師,市民運動家,行政など関係各人,各所,さらに介護制度や慣習にも目を向けている。また,筆者が実際に鼻にチューブを挿入したり,ベッドに縛りつけられてみたり,と体験取材をして得た感覚から発せられる言葉は説得力を持ち,「介護とは何か」を包括的に知るにはお薦めの一冊である。
現在は,介護者の半分以上が60歳を超える「老老介護」の時代である。介護期間もこの10年間で倍増し,平均7.3年となっている。この事実は介護者の半数以上が自身の病のために通院中であることと直結する。だからこそ一人で抱えこまず,社会のシステムを最大限利用することが重要になってくる。
しかしながら現状は各所の連携がスムーズではなく,多くの老人はベッドに縛りつけられ,自由を,そしてチューブによる栄養吸入により,食の楽しみを奪われている,という情けない結果になっている。
本書には,この現状を打破しようと立ち上がり,9割以上の老人の鼻からチューブを取り外すことに成功した特養ホームの例や,車イスやベッドに縛りつけることなく,人間らしい介護方法を実践している病院の例が紹介されている。担当者たちは一様に「人手不足は言い訳」だと言う。
また注目の介護保険に関しても,行政の努力により6100円の保険料を3405円に半減させた村や,増長する要介護者と苦悩する介護者などを取り上げて現場の吐息を露わにしている。
唯一,新聞記事をまとめて書籍化したことからか,内容が散漫かつ浅薄になってしまっている個所が見受けられる。この点が非常に残念である。
(C) ブッククレビュー社 2000
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