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脇 祐三さんのレビュー一覧

投稿者:脇 祐三

3 件中 1 件~ 3 件を表示

紙の本現代世界と宗教

2000/12/28 12:17

グローバル化時代の宗教について幅広い視点を提示し,西欧流近代化の発想を問い直す

1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

 冷戦後の世界では地域・民族紛争が焦点の一つになり,紛争の要因として宗教対立がクローズアップされた。だが,宗教を紛争の基本要因とみなす「文明の衝突」論は,あまりにも議論を単純化しすぎているし,先進国でも「宗教復興」「宗教意識の覚醒(かくせい)」あるいは「新宗教の台頭」といった現象が見られる。多様な宗教のあり方を一元的に論じるのは困難だが,「近代化=宗教の衰退」というかつての近代化論の常識が当てはまらなくなり,グローバル化の進展や情報メディアの発達,国民国家の枠組みの変容などに伴って,宗教は「ポスト近代」を考える際の重要な命題として再び浮上してきたといえるだろう。
 こうした問題意識に立って,本書では,アジア,中東,欧州,米国,アフリカなど様々な地域を対象とする日本の研究者たちが,人類学,社会学,歴史学,宗教学,メディア論などをクロスオーバーさせる格好で,今の世界と宗教について論じている。
 チベット仏教の世界観と国際政治におけるチベット問題を重ね合わせた解説や,タイにおける現代の仏教の諸相の説明,近代化とアイデンティティーの問題や映像メディアを通じた情報の共有性という視点を重視したインドのヒンドゥー・ナショナリズム拡大に関する報告などは,アジアの現状を理解するうえで有益だ。中東での具体例として取り上げたレバノンの宗派間の利害関係,旧ユーゴスラビア紛争の背景にあった正教会の組織と各国の政治権力との関係などの解説もわかりやすい。欧州におけるトルコ系住民のイスラム意識覚醒の章は,移民を疎外する社会構造に力点を置き,米国については政教分離の一方にある「ユダヤ・キリスト教的伝統」とその政治・外交への影響を簡潔にまとめている。
 第二部の討論では,議論が十分に収れんしていないものの,宗教の現在と未来を考える際の広範な視点を提示しており,示唆に富む。
(C) ブッククレビュー社 2000

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紙の本イスラームと日本政治

2000/12/01 21:16

ユーラシアに広がるイスラム圏への巨視的認識を示し,日本外交の戦略性欠如を照射

0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

 中東だけがイスラム世界ではない。バルカンから旧ソ連,南アジア,中国も含め,ユーラシア大陸を横断する広大な帯として,イスラム圏は存在している。東西冷戦終結後の国際情勢を理解するうえで,この地域の動向は重要なポイントの一つだ。本書は中東を超えた広がりを持つイスラム圏への巨視的な認識を示したうえで,近年,世界で起きたさまざまな出来事を縦横に論じ,日本の外交の問題点を浮かび上がらせている。
 1998年にタジキスタンで秋野豊・元筑波大学助教授が殺害され,99年にキルギスで日本人技術者が武装集団に拉致された。2つの事件が起きた中央アジアからアフガニスタンにかけては国境を超えた地域紛争の場だ。本書はまず,独裁政権の存続,野党勢力とイスラムの結びつき,資源をめぐる地政学を踏まえ,この地域の紛争を構造的に説き明かす。
 さらに著者は,ルクソール事件が示した原理主義過激派の行動の背景とイスラム世界の歴史における宗教と政治の関係,グローバリゼーションに伴う文化の画一化と社会の伝統,中東和平プロセスの意味,日本やアジアのエネルギー安全保障とイスラム圏との協力関係の重要性など,広範なテーマに筆を進めていく。各章を通読することで,読者は今日のイスラム世界の動きを理解するために必要な多くの知識を得られるだろう。
 そのうえで全編を通じ,日本が国際関係の変化にどう対応してきたのかという問題を著者は提起する。湾岸危機は世界の安全保障に関する日本人の意識の低さ,危機管理能力の乏しさを改めて示す実例でもあった。そして橋本龍太郎内閣の97年当時には対ロシア政策にも「ユーラシア外交」という構想の片りんがうかがえたのに,その後の日本政府は外交のグランド・デザインを失ったと著者は言う。「日本外交」を題名に加えたところに著者の鮮明な問題意識が示された国際政治読本だ。
(C) ブッククレビュー社 2000

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比較的最近のニュースを材料に現在の国際関係のポイントを提示する秀逸なテキスト

1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

 国際政治や国際関係を論じたテキストは数多い。だが,そのほとんどは近現代の世界史のおさらいか,冷戦時代までのさまざまな国際政治の理論を解説したものであり,現在の国際情勢を理解する手引きにはなりにくい。これに対し,放送大学用の国際政治のテキストとして執筆された本書は,国際情勢に関心を持つ人々に「いま,なぜ,こういう事件や現象が世界で起きているのか」「国際政治の表層の動きの背後で,どういう力学が働いているのか」を幅広く説明する優れた啓蒙書にもなっている。
 国際政治を動かす映像メディアの影響力とその功罪,経済のグローバリゼーションや国境を超えた一体化の進展と一方での地域主義や新たなナショナリズムの台頭,宗教原理主義が広がる背景,大国のパワーゲームの背後にある資源をめぐる戦略,世界の新たな焦点の一つである環境問題や国際関係の新たなアクターとしての非政府組織(NGO)……。本書の各節で取り上げている主題はいずれも,これから21世紀にかけての国際政治を考えるうえで重要なテーマである。
 著者は冷戦終結後の10年あまりの間に起こり,なお記憶に新しい実際の出来事を題材に取り上げ,その歴史的経緯をさかのぼり,最近の社会や経済の変化と重ね合わせて,現在の世界,今後の世界を理解するために欠かせない多くの視点を提示していく。
 「新しい世界像を求めて」という副題を添えたあたりに,カビの生えたような過去の国家間の関係の歴史を理屈でなぞるのではなく,国家自体が変質し,パラダイムが大きく変わりつつある“世界の今日”を語ろうとするジャーナリスティックな意欲もうかがえる。
 著者は自らの専門分野である中東・イスラム世界に関する記述に比較的多くの紙幅を割いている。それが本書の特徴の一つだが,人口の爆発的な増加と財政や雇用の問題など政治の動きの背後にある経済構造や社会意識の変化への目配りも利いており,米欧社会に根強いステレオタイプな中東観や安直な「文明の対立」論を批判しつつ,他の中東専門家によくありがちな“中東オタクの独善”に陥らない記述のバランスの良さを保っている。
 発刊後に大きな変化が起きた朝鮮半島情勢の部分を除くと,各地域に関する概説のほとんども,今後,当分の間はファンダメンタルズ解説として通用するだろう。
 米国の政治の変化や最近の中国,ロシア情勢,さらには経済グローバル化と政治戦略の双方をからめた米中,米ロ,中ロの関係などへの言及が少ない点に多少の不満は残るものの,全編を通じて記述は平易であり,現在の国際政治についての著者の論点はよく理解できる。地味な体裁の教科書だが,社会人向けの新しいタイプの国際政治入門書としてもロングセラーになり得る内容を備えている。
(C) ブッククレビュー社 2000

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