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西岡幸一さんのレビュー一覧

投稿者:西岡幸一

5 件中 1 件~ 5 件を表示

日本経済新聞2002/03/17朝刊

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 なぜ日米間で産業の競争力の逆転が生じたか、なぜ米国が情報技術(IT)産業で世界の覇権を握るようになったのか、なぜシリコンバレーが活力ある新産業創造拠点になり得たのか、など産業再生を目指す日本が解き明かしたい疑問に答えるキーワードのひとつとして、このところ注目されているのが本書名になっている「モジュール」化である。
 論者によってその中身の受け止め方が違い、アウトソーシングのことと喝破する経営者もいれば、効率的な分業体制、という見方もある。アカデミックにこの概念を整理したハーバード大学ビジネススクールのボールドウィン、クラーク両教授によると「それぞれ独立に設計可能で、かつ全体として統一的に機能するより小さなサブシステムによって複雑な製品や業務プロセスを構築すること」になる。このサブシステムがモジュールだ。
 つまり何でも自社内で抱え込まないで設計、生産を問わず今日的に分業する仕組みである。モジュールごとに衆知を集めた競争を生み、その中のベストが選択されて最終的なシステムに組み上がっていく。ここでカギはデジタル化されている技術分野かそうでないかである。分業化だけならアダム・スミスの時代から存在し、代表的組み立て産業である自動車でも現実に行われている。しかし、コンピューター、パソコンなどIT製品でもっともモジュール化が進んでいる背景にあるのはデジタル技術である。
 本書は昨年七月に経済産業研究所主催で開かれたモジュール化についての国際コンファレンスへの提出論文や前記二教授の基本論文をベースに、日本の第一線研究者による自動車産業や半導体製造装置産業、ゲーム産業など主要な産業におけるモジュール化の動きの分析などを加えた。この問題を包括的に分かりやすくとらえており、製造する装置が精度の上でほぼ物理限界に接近した場合でもモジュール化が有効か、という問題提起は匠的な技術の復権と併せて興味をそそる。巻末に収められたパネルディスカッションの議論も示唆に富んでいる。
(C) 日本経済新聞社 1997-2001

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日本経済新聞2002/04/14朝刊

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 四月からペイオフ制度が解禁になった。大事な虎の子は自分の才覚で守りなさい、というわけだ。政府が主導している構造改革・規制緩和の流れのひとつの底流がこのリスクを自分が取る、自己責任ということだ。
 いうまでもなく、私たちは誕生から死ぬまで様々なリスクに直面し、対応している。事故、災害、病気、失業などのそれと分かるリスクもあれば教育、結婚、就職などリスクを含んだ重要な決断もある。こうしたライフサイクルの中で遭遇するリスクを経済学の視点で系統的に分析し、どう対応しているかを考察したのが本書だ。
 各種の社会保険などリスクに対応した制度の解説に流れると退屈になりがちだが、幼少年期、勤労期、引退期など生活の各段階でどういう形でリスクが表れてくるのか、その安心度を高める装置や仕掛けはどうなっているか、を多くの研究成果も踏まえて、平易な分かりやすい叙述で読ませる。
 この現状の説明だけでも十分参考になるが、著者の狙いはこれからどう制度的に対応すべきか、にうかがわれる。高齢者の介護や扶養、企業の社会保険負担などに表れているような、家族や企業がリスクを緩和し負担する仕組み、すなわちセーフティネットを提供している状況を改めて、国が全面的にセーフティネットを引き受ける福祉国家に転換すべきだという。具体的には、哲学・倫理学や社会学、政治学など様々な角度からの議論を踏まえて、米哲学者ロールズの普遍主義に立脚した福祉国家を目指すべきだとする。
 著者によれば日本は米国と並んで北欧型の福祉国家の対極にあり、国家が提供する福祉レベルが低い代表格である。社会保障給付費の国内総生産(GDP)に占める比率が米国よりも低い、と指摘されると少し驚く。当然、国民負担率の上昇を是認することになり、小さな政府を志向する最近の流れとは対立するが、福祉国家への批判には懇切丁寧に反論を展開している。
 結論は特に目新しいものではない。しかし、安心して暮らすには、という身近な関心事を切り口に経済社会を興味深くえぐっている。一読を勧めたい本だ。
(C) 日本経済新聞社 1997-2001

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紙の本比較制度分析に向けて

2001/08/30 22:17

日本経済新聞2001/08/26朝刊

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 各国の市場経済の特性、経済制度を、情報の経済学やゲームの理論を用いた普遍的な分析の枠組みから考察する「比較制度分析」のパイオニアといってよい著者の現時点での研究を集大成したものである。書名には「向けて」という言葉が入っており、研究途上ということを示しているが、著者とその共同研究者たちが生みだした独創的な収穫は実に多岐にわたっており、ずっしりとした読みごたえがある。日本をはじめとした先進国や移行期にある国の市場経済システムを研究する上で重要な定本になるのは間違いない。
 著者はこれまで日本の経済制度の合理性や普遍性の解明から始めて、コンピューターやインターネットが及ぼす企業内や企業間の情報構造の変化、金融機関のガバナンス(統治)、さらには移行期諸国の制度問題や「シリコンバレー型企業」の革新性などへと分析対象や領域をどん欲に広げてきた。その節目ごとに『経済システムの進化と多元性』(東洋経済新報社)、『日本のメインバンク・システム』(同)などを著してきた。
 本書を一読して分かるのは、これらの研究発展の足跡が見事に有機的につながっていることだ。視点が経済学にとどまらず社会学、法学、政治学、歴史学、心理学、生物学などの研究成果を踏まえた広い視野に立っているのにも驚く。そこから制度的な事例を具体的に拾い出し、理論的な説明を与えて、体系的に経済現象を記述する。
 十年にわたる停滞に苦しみ、構造転換がスローガンになっている日本経済を考える上で興味深いのは、グローバル化や情報通信革命の下で、日本的特性は世界の主流に収斂(しゅうれん)していくかどうか、ということであろう。言い換えると、各国の経済制度は環境変化に対して同じように反応せざるをえないのか。本書の終章の分析はこれに疑問符を付けている。極めて刺激的な示唆ではなかろうか。
 新しい研究領域の最新の成果を英文原著から訳しているためか、用語が必ずしもこなれていない。しかしそれも知的興奮の妨げにはならない。
(C) 日本経済新聞社 1997-2001

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日本経済新聞2000/10/15朝刊

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 面白い。書名にあるように一八二〇年から一九九二年までの約二世紀にわたる世界各国の経済成長の足取りを国内総生産(GDP)などの数字で表し、比べたものである。先進諸国でもこれだけの対象期間となるとデータや資料は不足している。まして、発展途上地域は手がかりをどうするのか、アングラ経済はどう計上するのか、通貨単位が各国で異なるのをどう整合的に比較するか、など読む前から素朴な疑問が次々に浮かんでくる。
 経済発展の分析の専門家として経済協力開発機構(OECD)などで研究を重ねてきた著者は関係資料を駆使し、合理的な推計を加えて長大な経済成長の比較統計を完成させた。有名なW・ペティの「政治算術」を嚆矢(こうし)にして各国それぞれに研究の歴史があり、我が国でも大川一司氏らによる明治期から第二次大戦前までの国民所得推計や、最近盛んになっている江戸時代の経済活動水準の研究などがある。しかし、これだけ長期に及びかつ世界百九十九カ国をカバーした推計はない。GDPを一九九〇年基準の統一価格で表示しているので国際比較が可能になっているのも意義深い。
 数字を眺めていると様々な想像をかき立てられる。徳川将軍家斉の文政三年(一八二〇年)、ナポレオン戦争終結後五年の世界で日本の経済規模はすでに六位であった。中国は断然トップでほぼ日本の十倍、二位のインドも五倍という経済大国だ。米国は九位で日本の半分。こんな中国、インドが、一人当たりGDPでは二—三倍になる英、仏などの欧州列強にいとも簡単に侵略されてしまう。著者によれば経済成長の黄金期は一九五〇年から七三年、次いで一八七〇年から一九一三年という。いずれも日本経済の発展が大きく貢献している。お荷物視されている現状がふがいない。
 新しく統計を作るのはエコノミストとして割の合わない仕事である。多大の時間と労苦がかかるのに地味で評価されにくい。刺激的な労作を仕上げた著者の努力に賛辞を呈したい。
(C) 日本経済新聞社 1997-2000

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日本経済新聞2000/7/30朝刊

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 「取締役の過半数を社外取締役にすべきだ」。つい先日、長野県の軽井沢で開かれた経済同友会の夏季セミナーで北城恪太郎副代表幹事(日本IBM会長)はこう報告をまとめた。参加した経営者の間で激しいやり取りがあったが、この数年、日本企業の低迷と反比例するようにコーポレート・ガバナンスの論議は活発になった。関連書やリポートも少なくなく、経済同友会自身、毎年発表する「企業白書」で議論を提起している。
 その中で本書の特徴は二つある。ひとつは経営者や株主の視点ではなく労働界の側からコーポレート・ガバナンスをめぐる議論をうまく整理していることだ。コーポレート・ガバナンスは雇用や労使関係と密接不可分であるにもかかわらず、これまで労働側の関与が物足りなかった。もうひとつは議論のための議論や理念の披歴ではなく、東証一部上場企業千三百社余りの役員に対して行った大規模なアンケート調査(回答社数七百余、九九年一—二月時点)を土台に、日本企業のコーポレート・ガバナンスの現状や今後のありようなどを分析していることだ。
 日本企業が再生するためにコーポレート・ガバナンスの確立がひとつの焦点になっているものの、現に経営に携わっている人々がどう問題をとらえ、予見しているのか、定量的な分析に堪えるデータはほとんどないのが実情である。その意味では貴重な実証材料を提供している。
 もっともデータから抽出された知見や結論にとっぴなものはない。いわゆる日本的経営と一体になった日本的コーポレート・ガバナンスが変化しつつあるが、欧米企業にとっては伝統的で、かつグローバルスタンダードであるかのように見られる「会社は株主のもので株主価値最大化が目的」とする明快な立場に賛同するのはきわめて少数派だ。株主価値の最大化に向けて資本効率の向上を目指すが多様な経営理念などがあっても良いという。
 極めて穏当で、マスコミで報道されている動きよりも保守的な姿勢に映るが、現実にはこの辺りが産業界のコンセンサスなのかもしれない。
(C) 日本経済新聞社 1997-2000

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