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御手洗陽さんのレビュー一覧

投稿者:御手洗陽

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紙の本メディアの法則

2002/10/09 22:15

メディア論的発想の終わりなき実践者──遺作からみるマクルーハン

3人中、3人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

 息子エリックとの連名で著された、マーシャル・マクルーハンの遺作がついに邦訳された。自らの研究をメディアの詩学と呼び、文法学や修辞学の伝統に位置づけるという、最後の著書ならではの面白さは、翻訳監修者によるこだわりの案内文に、詳しい解説を委ねることにしよう。メディア論の観点からは、特に次の二つの点が注目される。

 まずはとりあげられているのが狭い意味でのメディアだけに限られず、人工物一般へと拡大されていることである。かつて『メディア論』などの議論でも、鉄道や時計、貨幣などが対象となっていたが、本書では衛星、都市、パイプ煙草、ワイン、絵画のキュビズム、マズローの法則、記号論等、ハードウェアからソフトウェアまで、じつにさまざまなレベルの人工物がとりあげられている。

 技術は人間の身体から発されたもの、外化されたものであり、発話される言語と同じように、あるいは言語そのものとして理解することが可能である。そう考える著者自身によって、本書ではこれまでよりもさらに自覚的に、考察の射程が拡げられている。

 また次に、これがなによりも本書独自の主張になるわけだが、それらのメディアや人工物の作用を理解するための法則が「テトラッド」(四つ組)として定式化されていることである。著者はメディアや人工物の作用を、「強化」「衰退」「回復」「反転」という、まさに四つの相から理解することを提案している。

 例えばコピー機(「ゼロックス」)は印刷の速度を強化し、製本された書物を衰退させ、会議等で口頭の伝統を回復・復活させ、ついには誰もが出版者となることをも可能にする、と考える。また同じように、解釈学は読解の明瞭さを強化し、単純素朴な読みを衰退させる。さらに魔術的なまでの記号世界の深さを回復させ、その果てには不明瞭さへと反転させるのである。

 未だ説明が荒削りで、なかにはやや首を傾げたくなる事例もないわけではない。それでもありふれたメディアや人工物の「隠れた作用」に気づくための道しるべとして、理解の方向性を指し示す手がかりとして、この「メディアの法則」は貴重である。マクルーハンが芸術の発見機能(「人類のアンテナ」)を説く際によく指摘するように、環境化している技術ほど、誰もが意識しないままに作用し、いつの間にか身体をマッサージしているものはないからだ。

 本書にならっていえば、広い意味でのメディアは、関心が直接に向けられる「図」に対して、関心の外にこぼれ落ちる「地」として働く。その「地」を問い続ける姿勢こそが著者の持ち味である。この最後の著作はメディア論の発想にこだわり続けた先駆者の、表向きの軽快さとは裏腹な、頑固なまでの一貫性をよく伝えている。(御手洗陽/メディア論)

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