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尾崎  護さんのレビュー一覧

投稿者:尾崎  護

3 件中 1 件~ 3 件を表示

紙の本民族の世界地図

2000/10/26 00:22

日経ビジネス2000/6/12

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 先進諸国の新聞と読み比べると、わが国の新聞は世界各地で発生している紛争について報じる量がかなり少ないとよく言われる。そのことをもって日本人の平和ぼけと内向きな視線を示す一例と見る向きすらある。
 みんな黒髪で(最近は金髪、茶髪もいるが)、似たような顔をし、ほとんどの人が同じ言葉を話して暮らしている日本人は、日常「民族」ということをあまり意識せずに済む幸せな国民である。だから「民族自決」などと気楽に言うが、多民族を抱えて微妙なバランスの下に国家を形成している国々にとっては随分危険なことを口走っていることに気がつかない。しかし、21世紀には急速に人口が減少することが確実なわが国では、遠からず移民の受け入れが現実の問題となってくることだろう。そうなれば民族問題は他人事ではなく、渡来人以来の過去の歴史や、諸外国の状況に学びつつ、賢く対応していかなくてはならない切実な課題になってこよう。
 だが、マスコミで切れ切れに報道される民族間の紛争などを理解するには、民族の成り立ち、言語、宗教、歴史上のいきさつなどについてある程度の基礎的な知識が必要である。本書は、歴史学、考古学、宗教学、文化人類学などの研究者9人の手になるもののようであるが、世界の紛争のタネとなっている事柄について要領よく一般的な知識を与えてくれる。
 本書から興味ある知識がたくさん得られる。わが国では八百万やおよろずの神と言うが、インドでは、ヒンドゥーの神は3339(無数ということらしい)存在するのだそうである。森喜朗首相は「神の国」と発言して物議を醸したが、インドのネルー元首相は「ヒンドゥー教を定義することはできない」と嘆じたらしい。信仰の違いが民族間の紛争となる例は多いが、多神教の国は他人の神に寛大なようだ。
 ジプシーの語源がエジプシャンだというのも、なるほど納得がいった。かつてエジプト出身の民と誤認されていたようだ。ちなみに、最近ではジプシーという語の差別的な語感を避けて、ロマ(民族の自称ロムの複数形。人間の意)と呼ばれているようである。
 そんな雑学的トピックスに興じていると、国際貢献の柱として国連難民高等弁務官事務所に多額の拠出をする一方で、難民申請をしようとする外国人をほとんど門前払いにしているわが国のダブルスタンダードがさりげなく指摘されたりする。適切に挿入されている地図(ちょっと小さすぎるのが難点だが)も貴重な情報になっている。
Copyright (c)1998-2000 Nikkei Business Publications, Inc. All Rights Reserved.

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紙の本破産しない国イタリア

2000/10/26 00:20

日経ビジネス2000/1/31

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若い頃、外国の新聞雑誌や書物の翻訳をやらされていたことがあった。もう40年近い昔のことである。
 その頃、英国はまさに大廈の崩れる様を見るようで、それを支える一木は見いだせないように思った。英国病とまで言われた時代である。ところが、その後サッチャー首相という鉄の柱がみごとに国を支えて、国運回復に向かったから立派である。
 一方で、イタリアを見ていると、国家というものはどんなことをしていてもそう簡単にはつぶれるものではないという感を強くしたものだった。とにかく国家の要である首相はめまぐるしく交代し、さっぱり安定しない。たしか中央銀行が保有している金を質に入れてドイツから借金をしたことがあったが、当時の私にはこれはもうめちゃくちゃな話に思えた。それでもイタリアはしれっとして発展を続け、ひと頃は1人当たり国内総生産(GDP)で英国を追い越したりした。
 『破産しない国イタリア』を書店で見つけたときすぐに買ってみた。イタリアという国に対する私の長年の疑問に、ずばり答えてくれそうなタイトルに惹かれたのである。
 内容も私の期待に応えるものであった。「この本に登場するエピソードは、すべて実在の人物と実際にあった出来事をもとにまとめた」ものであると筆者は書いているが、もしこの断り書きがなければにわかに事実とは信じ難いものが含まれているところがイタリアなのであろう。
 毎週1度、公務員である夫のオフィスに立ち寄り、夫に対する付け届けを買い物かごに入れて持ち帰る妻、1998年の某日白内障の手術を受けた8人のうち4人が感染症で失明した公立総合病院、誘拐を生業とし株式会社誘拐集団と呼ばれる組織の存在、保険金目当てで毎年約20万件の虚偽の自動車事故報告が行われることなどなど、通常の日本人には想像の範囲を超える。
 コネ社会ぶりもすごい。就職から入院から何から何までコネがものをいうようだ。もちろん社会的批判はあるし、コネ利用にはしかるべき「御礼」も伴うのだが、社会の潤滑油として受け入れられているのだろう。よくよく考えてみれば、アングロサクソンのいうネットワークというものだって、コネと紙一重だから、どこでも似たことはあるのだろうが。
 それでもイタリア人はそんな社会を逞しく生き抜いていく。一人ひとりが生き抜く芸に優れているのだ。それがイタリアの活力の源泉となっている。イタリアの中小企業が強い理由がよく分かるような気がした。
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紙の本忘れられたアメリカ史

2000/10/26 00:18

日経ビジネス1999/8/16

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 日本人にとってアメリカという国は、いまや腐れ縁とでもいうか、癪にさわるが何をするにせよ頭から離れない存在になっている。
 特に、経済の世界はその最たるものである。最近はあちらの羽振りがよいものだから、なにかと高姿勢、攻撃的で、かさにかかってくるという感じが面白くない。
 と、ぶつくさ言いながらも、アメリカ人は総じて明るくフランクだ。欧州の人たちと比べて付き合いやすい、という気持ちも変わらない。私だけでなく、そう感じている人が多数ではないかと思う。
 本書は、そんな国アメリカの歴史を建国の昔から映画「スーパーマン」にいたるまで、新書1冊で語る歴史のエピソード集である。なんとなく知っているつもりだったアメリカの歴史だが、ああそうだったのかと初めて知る話がつぎつぎと登場する。
 ボストン・ティー・パーティーという独立前夜のできごとは広く知られているが、あれは英本国が茶に輸入関税を課したところから始まった話だとばかり思っていた。逆に、東インド会社がアメリカに輸出する紅茶の関税を免除したことが原因とはついぞ知らなかった。
 「フロンティア」に定義があって、1平方マイルに6人以下2人以上の人口を持つ地域をいうということも知らなかった。この定義によるフロンティアがアメリカから無くなったのは1890年のことだそうである。
 本書によると、南北戦争の際の南北両軍の戦死者は62万人と推定されているようである。第2次世界大戦の米軍の戦死者32万人、朝鮮戦争5万4000人、ベトナム戦争5万8000人と比べると、その混乱と痛手の大きさは想像するに難くない。敗戦後の南部に、解放された黒人とその後押しをする白人に対する反感から、クー・クラックス・クラン(KKK)が誕生した。彼らは黒人のみならず、カトリック教徒、ユダヤ人、外国人、飲酒、賭博も敵視した。この偏狭と稚気に支配された結社の団員が、1925年には約500万人に達したというのだからなんともすごい。
 南北戦争終了後、そのエネルギーが大平原に住む先住民と、彼らの生活の手段として神が与えたバッファローに向けられた。6000万頭以上いたというバッファローは絶滅の危機に瀕した。バッファロー狩りの1つの意図は、先住民の生活を破壊するためであったという。本書に語られる先住民の運命はあまりに哀れであるが、一方の白人たちは、未開地への進出が「明白なる神意」であると信じていたという話には、背筋をぞっとさせるものがあった。
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