田村 和久さんのレビュー一覧
投稿者:田村 和久
1 件中 1 件~ 1 件を表示 |
紙の本図解「金融工学」のことがよくわかる 初歩の初歩からブラック・ショールズまでをやさしく解説
2000/12/01 21:15
ビジネスマン・初心者に関心が高まってきた金融工学の世界を,難解なイメージを払拭して,わかりやすく解説
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
「金融工学」は,投資対象となる金融商品の「価値」をいろいろな角度から測る道具である。デリバティブ,オプション,スワップなど新しい金融商品が近年続々登場し,金融ビジネスが非常に複雑化してきた。同時に,情報技術(IT)の進歩,とりわけインターネットの普及により,こうした金融ビジネスが法人向けのみならず,個人向けにも急速に広がりつつある。自分にふさわしい金融商品を選択するに当たり,いちいち金融機関の店頭に出向かなくても,インターネットを通じていつでも必要な商品情報を入手し,売買できるようになったのである。
しかし,こうした金融商品は,時には大きな利益を生む一方で,時には大きな損失をも生む。そのために,顧客は,商品知識はもちろんのこと,自己の許容できるリスクの計算や期待リターンの計算のための有利な情報を金融機関に求めるようになる。この金融機関では,どのように金利,為替,株価,景気などの変動を読み,どのようにリターンとリスクの関係を数値化したのか,が大きな関心事になる。いま「金融工学」なる言葉への関心が高まりつつある背景にはこのような事情があるのだ。
金融ビジネスに対するニーズが高まってきたこの時期に,「金融工学」の基礎的な解説書がやはり出た。一般の人々にとって専門家向けの難解な専門書は必要ではない。本書は,日々金融工学の実務(大手証券系企業)に携わる人々の執筆であるだけに,初心者を読者に想定した編集スタンスが最後まで貫かれている。専門家にありがちな技術解説に偏ることなく,初心者に知って欲しい金融工学の基礎知識と,それが応用された金融商品やその運用実例などを,平易な文章表現とシンプルな図による解説で理解しやすく読ませる工夫がなされていて成功している。著者が指摘するように,金融工学は「おぼろげながらも金融商品の価値を見出す」発展途上の学問である。読後,金融工学の世界が将来どのように発展するのか,想像を広げさせてくれる好書である。
(C) ブッククレビュー社 2000
1 件中 1 件~ 1 件を表示 |