スルーさんのレビュー一覧
投稿者:スルー
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2003/07/13 22:50
そこには善も悪も無く
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結果として酷いことになった物事に、必ずしも「悪意」が付属されているとは限らない。軌川十助のした行為には「こうなればいい」といった願いは無意識のうちにあれど、決して悪意などは付属されていなかった。そこにはただ「哀しすぎる世界をどうにかしたい」という無垢な願いがあっただけ。
しかし彼は、恋をしてしまった。アイスクリームそのものを愛してしまった。自分の行っていた行為のなんたるかを知ってしまった。それが彼から「世界の敵」たる資格すらも奪っていった。
彼は、無垢になりきれなかった。
これは、哀れなお話だ。
「無知」そのものが罪である、とも取れてしまう残酷なお話だ。
しかし、誰にもそれを馬鹿にすることは出来ない。何故なら、誰にでも「少年時代」は確かに存在し、若者であった全ての、または現在進行形で「若者」である人々は、皆、軌川十助と同じ運命を辿ってきたはずだからだ。
この物語は、限りなくリアルな『幻想』なのだ。いや、リアルが『幻想小説』というジャンルに形を変えただけ、と思ってもらっても良いだろう。
今一度、確認するといい。
「若さ」は罪だ。
紙の本ブギーポップは笑わない
2003/07/18 16:18
世界はどこにも進まなくて
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ヒーローとは何だろう?
「正義の味方」がヒーローだとするならば、その時代によってヒーローの形は移り変わってゆくこととなるはずだ。何故なら味方するはずの「正義」という概念そのものが、そもそもあやふやなモノであるからだ。
違うんだ。ブギーポップは決して「正義の味方」ではない。彼は自分こそが「正義」だなどと、傲慢な事は思っていないに違いない。
事の正しさ、間違い、そんなものは彼には関係ない。否、関係できない。彼は「方向性の具現」であって、「そういうことをするもの」でしかないからだ。
それはもしかしたら悲しいことなのかもしれないし、空しいことなのかもしれない。
でも、彼は言った。
「僕は自動的なんだよ」
——ああ、そうなんだなあ。
ヒーローってのはそういうもんなんだよな。
迷わないよ。 迷えないよ。
この世界は、当たり前に狂ってる。
訂正しない。 改良しない。 革命は許さない。
この世界は、当然のように停滞してる。
ブギーポップよ。 ——先は、長そうだぜ。
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