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W.T.さんのレビュー一覧

投稿者:W.T.

2 件中 1 件~ 2 件を表示

紙の本はなれわざ

2003/08/17 04:21

A:ねえねえ、『はなれわざ』ってどんな話なのー?

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B:んー? 君いつも漫画しか読まないじゃん。

A:うるさいわねー、たまには本読んだっていいでしょ。いいから早く内容教えてよ。

B:内容って最後まで全部?

A:あほか。トリック以外よ。

B:そうねえ。一言で言うと、「ある1行に衝撃を受ける」タイプのミステリだね。この話では最後の方にある登場人物が言うセリフなんだけどね。そりゃもう…それを読んだ時のカタルシスといったら…。一体何が起こったんだ?って一瞬混乱して、その後頭の中に事件解決の雷が落ちるんだ! これを読んでミステリがしょうもないなんていう奴は…! はぁはぁはぁ。

A:な、なにちょっとあんた目がイっちゃってるわよ。

B:あ、ああ。ごめんごめん。ストーリーとしてはコックリルっていういけ好かないオヤジが探偵役の警部で、彼が参加した何とか島へのツアーが殺人事件に巻き込まれるっていうもの。作者のクリスティアナ・ブランドお得意の全員怪しく見えるってやつ。

A:へえ。文章は私みたいなのでも読みやすい?

B:うん。君みたいな勉強してなさそうな人でも、うわあっ! 痛い痛い!! ごめん、と、とにかく読みやすいから。意地悪い文章ではあるけど。ブランドって性格悪そうなんだ。君でも可愛らしく感じられるぐらいにさ。ははは、は、は……。

A:……あんた最近ずいぶん正直になったわね。

B:ご、ご、ごめん。でもどうしてこんなマニアックなミステリ読もうと思ったの?

A:本屋に傑作ってポップがあったのよ。ついに文庫化!だって。

B:え、えぇっ! 文庫になったの? 知らなかったよ! ポケミスしか出てなくて、僕まだ持ってないんだ!  何、どこの本屋? ちょっとAさん一緒に来てよ。今すぐ買いに行く。

A:ちょ、ちょっと! ひっぱらないでよ、痛い! 授業はどうすんのよ?

B:君! ひと時の授業より一生の傑作だよ! ほら、Aさんも買うんでしょ!

A:だからあんた目がイってるって…。怖い。ああ、もうだめね。この後はまた喫茶店でミステリ講義ね。しょうがない、付き合うか。

B:(やった! またAさんとデートできるぞ! ミステリ狂の僕がこの超傑作の文庫化を知らないわけないじゃないか。この手で何冊もう持ってる本買ったかな? まあいいや、でへへ)

                                 終

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紙の本彼女が死んだ夜

2003/07/31 16:31

小説を読むということが

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パラレルワールドに遊ぶということだとしたら、そういう意味でこの作品はある種の理想郷たり得ている。
ここでは登場人物の一人一人が、作中世界の中で実に「生きて」いるからだ。
タック、タカチ、ボアン先輩といったメインの登場人物たちは、私たち一般人が日常で話しているのとまったく同じ言葉を話している。
たかが大学生に過ぎないというのに、妙にある専門分野に詳しかったり、辞書でしか見かけないような単語をあたかも日常会話の構文であるかのように連発する輩はここには一人もいない。
彼らが酔い任せて事件に関する推理を文字どうり「暴走」させるのも、くだらない戯言をたたきあうのも、そして、結局のところ人生に対してどういう考えを持っているのかがさっぱり分からないところも、私たち一般人と全く同じなのだ。
いくつものどんでん返しを仕掛けたいわゆる「ミステリー」の本作、その謎が解かれるとき、登場人物たちは苦い思いを噛みしめることになるのだが、我々読者にとっても、別の意味でほのかな苦味が感じられる内容になっている。
作中世界が、事件が起こることは別にして、あまりにも「あり得る」世界であるために、自分の友人たちの姿や、自分の大学生活が頭をよぎってしまうのだ。
すでに思い出としてしまいこんでいたあの頃の生活が、この小説を読むとリアルに思い返されてしまう。
タックたちの飲んだくれぶり、少し甘酸っぱい、学生ゆえの緊張をはらんだ交友関係。
社会人として否応なく世の流れに押し流されている自分の今と比較して、「あの時もっとバカやってれば…」とどうしても思わされてしまう、そんな小説なのだ。
特異な登場人物と特異なシチュエーションで理想郷を描くことでは決してなし得ない、ノスタルジィの喚起がこの小説では見事に成功している。
近年トリックスターとしての地位を確立した感のある著者だが、私はむしろ登場人物たちの「生きた」言葉づかいを創造することの出来る、名文章家としての資質を感じる。
この作品はそんな西澤の特色が最も色濃く出た、傑作「小説」だ。

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