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タールさんのレビュー一覧

投稿者:タール

21 件中 16 件~ 21 件を表示

紙の本

布川敏和の生き様を読む

3人中、3人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

 誕生を待ち望んだ次女は、重い病を持って生まれてきた。その瞬間から始まった、家族の闘いの日々。「頭蓋底奇形腫」という難病の次女・花音ちゃんは、喉の奥から頭蓋底にかけてできていた腫瘍のために、生後数カ月の間に幾度も難しい大手術をしなければならなかった。

 元アイドルタレント同士の、いわゆる"順風満帆"な生活に突如たちこめた暗雲の中、もがき苦しみながらも必死に支え合い、励まし合って乗り越えようとする布川夫妻の互いをいたわる心情や、家族を想う強さ、逞しさがリアルだ。奮闘する両親と小さな妹を見守り続けた長男・隼汰くん、長女・桃花ちゃん兄妹の、一途な頑張りも胸を打つ。

 文章には拙いところもあり、読んでいてひっかかることもあるけれど、"本を書く"という慣れない作業に果敢に挑んだ布川夫妻の緊張感のある言葉が「本物」として心に迫る。「どうしても書いておきたい」という二人の強い意欲と熱意が覚悟として感じられる。引っ張られるように読み進めば、ラストに近づくに従って徐々に力みが取れて、「言いたいこと」を表現する筆力を意識していることも感じられる。それはつまりそれほどに「自分の言葉」を大切に本気で取り組んだ成果だろうし、この本が、辛い闘いの記録として書かれたものというよりは、乗り越えるべき試練を前にし結束できた家族の証しと、これからの自分と家族のあり方を模索するため渾身の力を出しきろうとする、家長としての布川の真剣勝負の一冊だからだろう。

 "タレント本"という偏見は免れないだろうし、確かにテレビタレントとしての制約も多々のぞく。けれど、それを鑑みてなお発せられるエネルギーは、真実の底力を伝えている。タレントとして求められるものの中、彼は必死の想いで書き記したのだろう。制約はあっても装飾はない。布川は真摯でひたむきだ。どこか底上げされているように感じるとして、それもまた丸ごと彼の生き様そのものだと思う。

 10代でデビューしたことで早くに親元から離れた布川が、40代目前という時期に相次いで両親を看取らなければならなかった、その苦悩も正直に記されており、心にせまる。"元シブがき隊のフッくん"が、悩める一人の男性・布川敏和としてさらけ出しているものは、"タレント本"の偏見も、闘病記という枠をも超えた、渾身の人生記だ。


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紙の本

紙の本千の噓

2008/11/04 11:59

嘘が彩る悲劇

2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

 母親の遺品の中に見知らぬ女性の日記帳を見つけたエイミー・ヴォーンは、そこに記された一見平和そうな家族の日常の記述に違和感を覚えた。
「もしかすると、彼女たちには別の人生があって、なんらかの理由でそれが
記録されていないだけなのかもしれない」
 ジャーナリストであるエイミーの頭脳は明晰だ。蒸し暑さに悩みながら、
遺品を手際よく片付けながら、疲れきった体と頭で、それでも彼女は日記を熟読し、解読しようと試みる。最期までエイミーに背を向けていた母の、怨念のごとく彼女を襲う幻聴に悩まされながら……。

 自分の癒されることのない傷を解決しようとするかのように、日記の謎に
迫ろうとするエイミーは、記述者であるモーリーン・シャンドについて、彼女と母親との関係について矢継ぎ早に調べ始め、シャンド家がヴォーン家の
親戚にあたることを知り、モーリーンの父レズリーがモーリーンの姉シーラによって殺された18年前の事件を知るが、シャンド家に接触を図るうちに、エイミー自身の周囲で奇妙な事件が起き始めるのだった。

 社会的テーマである、ドメスティック・バイオレンス。本編でもそれは救い難い残酷さでありながらも淡々と綴られているだけに、余計に悲惨さが際立つ。被害者であり加害者であるシーラが苦しみ続ける呪縛に、ミュンハウゼン症候群の母親から受けた傷を負いながらも強く生きようとするエイミーが、まるで自分の傷に立ち向かうように果敢に挑むと、それに応えてシーラもまた、少しずつ呪縛から自分を解き放つ努力を開始する。二人のひたむきさが印象的だ。

 エイミーをはじめ、エイミーの母に、シャンド家の女性。この物語の軸である、残酷な運命に負わされた傷に埋もれそうになりながらあがく女たちの、恐ろしく長く、とてつもなく辛い年月が痛ましい。
「家族という名の残酷」――帯に書かれている通り、家族という閉鎖された空間で、独裁者を止められる人間はおらず、被害者は被害者だと認識することすら許されないまま、地獄にとどまり続けるしかない。DVという言葉すらなかった時代、この類の地獄が本当にあったに違いないと思うと、また胸が締め付けられる。
 
 この本はしかし、辛く暗いばかりの物語ではない。エイミーと父親との再会と葛藤、その成り行きや、隣人の甥として現れた男性とエイミーとの関わりなど、味わい深く物語を彩っているし、とにかく、なりふりかまわず、という勢いのあるエイミーが魅力的だ。
 エアコンのない「ポンコツ車」を運転して渋滞にはまり、ハンドルに突っ伏して嘆くものの、すぐに自分を叱咤して顔をあげる。機敏な自己操縦のできる自立した34歳の女性、エイミー。どんなに残酷な過去を背負っていても、思うに任せない日常の問題に振り回されながらも、小柄な体を俊敏に動かして的確に仕事をこなしては、次々に振りかかる災難や問題の解決に貪欲にあたっていく彼女を追いながら読んでいると、"立ち向かう"ことの大切さや、それに必要な勇気と元気がもらえる気がする。

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紙の本

紙の本水無月の墓

2004/10/09 15:00

何気なくリアルに迫る異世界

0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

ようするに、「そこたら中に死者が在る。」みたいなお話、
とでも表現してしまうとすればそれは不適切だろうか、どうだろうか。
夢幻のようでもある異界を現世に見事溶け込ませ、何気なくもリアルな
掌編の数々に、いったい作者の中にどういう発想の根本が存在するものか、
と思っていたら、文庫で読んだこの本の最後、ホラー評論家・東 雅夫氏の
解説に答えのヒントをみることができた。
著者小池真理子さんのお母様が、『異形のもの、この世ならざるものと、
何度も遭遇してしまう人』であり、作者は『いたって日常的な茶の間の話題の
一環として、ナマの怪奇壇の数々を聞かされて育った』というのである。
そこに「何気なくもリアル」そんな感想の裏付けを見た、そんな気がした。
フィクションとしてどれほどに恐ろしいホラー話にも出来得る素材を、敢えて
作者の美意識の範疇にとどめて描き留められた作品たちは、それだからこそ
死んでもなおもの哀しい生き物である人間たちをリアルに描ききっているのだ。

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紙の本

紙の本ウルトラマンになった男

2010/03/15 11:21

ウルトラマンは、僕なんだ

17人中、17人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

 アルバイト代の全てを映画代につぎ込んでいた少年・古谷敏。憧れの東宝ニューフェイスに成長した彼に舞い込んだ初主演の話が、謎のヒーロー・ウルトラマンだった。映画俳優としてのプライドから、「顔が出る役」にこだわり固辞するものの、その身体的特徴(手足が長い、頭が小さいなど)から「古谷敏にしかできない役」だと説得された彼は、やがてしぶしぶウルトラマンを着ることを承諾する――。

 一言でいえば、初代「ウルトラマン」を演じて一世を風靡し、「ウルトラセブン」では心優しいアマギ隊員として人気を博した古谷敏が、40年以上の時を経て書き下ろした当時の撮影秘話ということになるのだろう。しかし、史上初めてウルトラマンになった彼が、開発途上としか言いようのない「ゴムのぬいぐるみ」に苦心と工夫を重ねて身体をねじこませ、過酷な撮影に限界をみた体験話は、撮影秘話どころではない生々しさと痛々しさを伴って迫ってくる。当時の大ヒーローだったウルトラマン。その実態として知るには、この年月が必要だったんだという思いで、しみじみ読んだ。

 読むと、その苦労たるや並大抵ではないと知らされる。当時を知っている人ならわかると思うが、ウルトラマンは当初顕しく変化した。それはつまり相当無理がある状態で始まったということではないだろうか。不具合を調整するのは着用後だ。着用している古谷氏はほとんど実験台のようになって、歩いては転び、動いては息が詰まり、宙づりになって痛みにのたうつ。文中「地獄」という言葉で表現されるほどに過酷な撮影の日々にあって、家に帰ってからも筋トレやポーズの練習を欠かさず行い、実直に頑張る古谷氏の姿には、ファンとして今さらながら頭が下がる。

 ウルトラマンとして文字通り命をかけて頑張っていた時、番組を酷評した新聞記事を目にして、限界ギリギリにあった心と体をついに持ち堪えられなくなり、降板の決意をした古谷氏が、生き生きとウルトラマンを語る子供たちの熱っぽい声に引き戻される場面が印象的だ。覚悟を決めた古谷氏は、「ウルトラマンは僕なんだ」と気づいたという。その清々しい場面に「ウルトラマンになった男」というタイトルの意味がじんわりと効いた。

 ところで、撮影現場の「地獄」が描かれているとはいえ、この本のポイントは、痛々しい話ですらどこかほんわかとさせてしまう古谷氏の語りの柔らかさ(氏の人柄の良さなのだろうが)にあると思う。たとえば彼は、しめつけられるゴムのせいで、休憩のたびに吐いてしまうのに、誰にも気づかれたくないということばかりを書く。怪獣を演じる大変さを体験する段では怪獣役の役者に称賛の声を惜しまない。自分自身がいつ大怪我をするかもしれない大きなリスクを抱えているというのに、他のキャストやスタッフのことを常にねぎらうし、監督をはじめとする制作者たちのことををすごい人たちだと手放しでほめちぎる。自身の状況をどこか他人事にして、周囲の人の仕事ぶりを気に掛け感謝を捧げる素直な言葉が、痛々しいはずの話を温かいものに変えていく。

 きっと古谷氏はこれまで、こうした苦労話を自慢話として熱弁をふるうのでなく、とっておきの思い出話としてさりげなく語り続けてきたのだろう。それがじんわりと人々の心に沁み渡り、本を書いたらと勧められ、初めてウルトラマン役をになった時のようにしぶしぶながらも承知して、子供たちの声に励まされてウルトラマンを続ける決心をかためた時同様の純粋な心根のままに書きあげた。そんな気がする。生々しい現実も苦しい過去も、スペシウム光線を美しく決めた大きな掌でくるみこんでは温める、そんな古谷氏の生粋の優しさによって心安らかに知ることのできる特撮秘話は、テレビ創世記時代を知るためにも有効だと思う。

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紙の本

紙の本ちょんまげぷりん 2

2010/09/09 23:31

頑張れ14歳!!

4人中、4人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

原作も映画も面白かった「ちょんまげぷりん」。その続編を今この時期に(「絶賛公開中」の帯付きで)出版するというのはいかがなものかと一瞬躊躇するも結局買ってしまったのだが、前作同様のスピード感躍動感衰え知らず、一気に読まされた。

6歳の時に江戸時代からタイムスリップしてやってきた木島安兵衛と出会った友也が、8年後、今度は自分が江戸時代へ飛んでしまうというお話だ。

14歳の友也はその頃、母親であるひろ子とはケンカばかり、かつて安兵衛から教わった剣道も、ひろ子に残念がられながらもやめてしまっていた。塾をさぼってコンビニで万引きをしたあと、帰るに帰れず深夜徘徊をしていた時に起きたタイムスリップで、友也は「これでひろ子に怒られるのを当分先延ばしにできる」と安心する。このあたりの緊張感のなさ、厳しい事柄から本能的に目をそらすさまはまさに中学生だなと、同じ中学生の息子を持つ私としても、やれやれと感じた場面だ。

見知らぬ世界にきてしまっても「それほど深刻に」受け止めずに済んだのは、21世紀に来てしまった安兵衛が結局元の時代に帰れたことを知っていたせいと、「また安兵衛に会える」と期待したせいだった。ところが探しても訊ねても、安兵衛はおろか、21世紀にちゃんと残っていたはずの「時翔庵」すら見つからない。うろうろしている間にも、服装と茶髪が見咎められ石を投げられ追いかけられる羽目になる――。

このあと、妙に落ち着いた子供・麟太郎、麟太郎のいとこのせんと行動を共にして安兵衛を探すことになる友也。せんの手引きで歌舞伎役者・市川海老蔵と出会い、歌舞伎役者として一躍脚光を浴びる場面に、安兵衛がかつて「時の人」としてもてはやされた時よりもずっとスカっとしたのは、友也のスター性のせいだろうか。それとも頑張る中学生・友也へのエールだったろうか。「毎日をだらだら過ごしていた」友也が他に選択の余地なく与えられた仕事に真剣に取り組む様子にも、いい経験ができているなあと、つい親の目線でみてしまった私はきっと、すっかりひろ子の視点になっていたのだろう。

囚われの身だった安兵衛を救い出し、一度は頓挫した阜凛(プリン)作りに挑む友也、麟太郎、せん、そして瓦版屋のやえ。期限は10日。大団円に向けてますますスピードアップしていくラストにワクワクする。

テレビで発言を求められていたおかげで21世紀の教育問題についても詳しい安兵衛が、友也の「何もかもがつまらない気分だった」という告白を聞き、「近頃むしょうにまた学問がしとうなって参ってな」と告白する場面がいい。

「あの頃(中学生の頃)もっと勉強しておけばよかった」と、ほとんどの大人はそう思っているのではないか。ほとんどの親が、中学生の我が子に対して「今勉強しなくていつするの」と言いたくてたまらない、もしくは口角泡を飛ばしているのではないか。このセリフを安兵衛の口から言わせているだけでも、この本の価値があるような気がしてしまうのは、私自身が悩める母だからでしょうか。

こうして書くといいところばかり並ぶけど、前作が良かったせいか、映画の影響を感じるせいか、とってつけた感に時々ひっかかりはした。タイムスリップの場面や、のちの著名人がやたら大勢絡むとか、恋愛話とか。2は必要だったのか?という最初の疑問も断ち切れない。

それでもここまで続けたからにはいっそもっと続けてほしい気もしてしまう。前作を読んだ時から頭に映像が浮かんでいたエンタ色濃いこの作品。いっそドラマにしてほしい……かも、です。

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紙の本

紙の本贖罪

2011/04/13 09:31

『告白』と比べなければいいのかもしれないけれど、それなりに面白く読める分、もう少しなんとかならなかったかともったいない気がしてしまう。

0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

空気がきれいなことだけが取り柄で、夕方6時には「グリーンスリーブス」が流れる、のどかだけど閉鎖的な田舎町で、ある夏の日、ひとりの少女の惨殺死体が発見される。被害者となった少女が犯人と目される男に連れられていくのをただ見送ることになってしまった4人の少女たちは、それぞれが心の深い部分に傷を負い、その後の人生を大きく狂わせてゆく。

彼女たちに罪の連鎖を起こさせた原因は何だったのか。悪者は誰で、贖罪とは誰に対するものなのか。そこにとらわれながら読んでいるといつの間にか足元を掬われて、善悪とは、個人が自分に都合のいいように気持ちを仕分けるためだけに作られた考えでしかないのだと思っていることに気づく。

そもそも、個人の考え方生き方をつぶさに検証していけば、どんな行ないにもそれなりに理由なり言い訳なりは成立するだろう。この作家による複数人の独白形式は、個人の言い訳をクローズアップしていくことで、善悪の区別を失わせる。けれど、ではそこから何を汲みとればいいのだろうか。この作品のテーマが不明瞭なのは、善も悪もないとして、では何を感じればいいのか、というところがひどく曖昧だからという気がする。

話題作『告白』同様、複数人の独白形式によるこの物語で、個人の脳内は傍からは計り知れないものだと思い知らされるばかりだ。想像を膨らませるのが作家の仕事なのだとしても、この作家は特に身近な人に対する妄想を発展させることで書くタイプなのかなと考えながら読まざるを得ず、女性の独白に偏って男性の視点がほとんどないのもいかにも女性ならではの妄想癖っぽくてあまり気分のいいものではなかった。

語り手が替わり、時系列も前後するのにわかりにくいということがないのはさすが。にしても、基本的な文章力の部分で多少混乱を生ずるところに気づいてしまったり。

形式が同じなためにどうしても『告白』と比べてしまい(『少女』は未読です)違和感がぬぐえないけれど、全然別物の軽いエンタメ系としてみるならスピード感があり一気に読めて面白いと思う。思うがしかし、物足らない。終章の構成も唐突で、そのままラストというところも物足らなさを増幅しているし、その不足感を作家の狙いと感じられないところがまた痛い。

――だって仕方がないじゃない、私はそういう人なんだもの――というコメディみたいな麻子のキャラクターが個人的には嫌いではないけども、結局そんなお気楽タイプに周囲が振り回されただけのように読めてしまった。事件が事件なだけに、しかも被害者は……。そのあたりを鑑みればつい、おいおいそんなことでいいのか、と突っ込みをいれてしまいそうになる。

密な関係の地域社会に構われて育つ子供はしっかりと地に足がついて大人もどきであるのに対して、見て見ぬふりの都会育ちの大人はいつまでたっても子供のまま。地域の後ろ盾がついている子供たちを、大人子供のまま母親になってしまった麻子は怖かったんだろうと思うし、孤独だったんだろうけど、田舎の密度の濃さもまた独特の孤独を生む。孝博の孤独なら共有できたのに、田舎町で育つ少女たちの孤独には思い至れなかった。それが麻子の失敗といえば失敗なんだろうけれど、そもそも歩み寄る気がなかったのだから仕方がない。

結局、読後感もそれに似て、どっちつかずに放置されてしまうところがテーマの不明瞭を生んでいるのではなかろうか。せめて犯人の独白があれば『告白』に迫れたような気もするし、ベリーづくしの表紙絵が表すのが女性たち限定の物語ということならばそう読まなければならない気もするし、だけどそうする必要があるとも思えない。とにかくいろいろ残念でした。

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