片岡まりさんのレビュー一覧
投稿者:片岡まり
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紙の本赤い大地のパリジェンヌ
2003/01/06 17:13
訳者コメント
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冒険文学に憧れ、アフリカを夢みて育った18歳のフランスの少女がついにひとりで旅に出た。たどりついた先はナミビアの最果てのカオコランド。そこには体じゅうに赤い粉と脂を塗りつけたヒンバ族が暮らしていた。不思議な儀式、熱狂的な踊り、草原での逃亡、無数のプロポーズ、そして友情! ソレンはやがて首長の養女になり、彼らの生活に溶け込んでいく。そこに大問題が持ちあがる。一帯を水没させてしまう政府のダム建設計画だ。
広大なアフリカの大自然の持つ過酷さと美しさを描いた情景は読む者の心を捉える。厳しい自然と戦って生きのびるヒンバ族の知恵と勇気。彼らは人間の弱さや愚かさを隠さず、苦しみを笑いに変える心の豊かさをもつ。
少数民族の問題から現代社会の歪みへと、ソレンの視点は広がっていく。ソレンのみずみずしい感性で見た世界が素直に描かれ、その心の成長を追いながら私たちも彼女の体験を共有し、彼女の世界に惹き込まれてしまう。本当に魅力的な本だ。
片岡まり(翻訳家)
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