佐藤雅彦さんのレビュー一覧

いつか、この物語を書こうと思っていました

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「いつの時代か、どこなのか、そのあたりは不明なのだけど、誰かが掌にのせているような、ある狭い閉ざされた場所で、ある満ち足りた時間が流れてた。『砂浜』では、そこだけを書きたかったんです。
　子供たちが毎日海へ出かけて行き、喧嘩したり、泣いたり、騒いだり、冒険したりして、いきいきと生きている。僕が小さいときそうだったのですが、いま考えると何かに守られているような、なんの疑いもない、幸福な時間です。しかも、本人たちは充分満足しているのではなくて、ちょっと何かを求めている、新しいこととか、面白いことを。
　そうした健全な空腹感というか、そういうものに満ち溢れている時間の流れ方を封じ込めたかったのです。」───（紀伊國屋書店『i feel』インタビューより）