Ichiroさんのレビュー一覧
投稿者:Ichiro
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2004/11/19 03:15
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僧が問うた。犬にも仏の性がありますか。
和尚が答えた。「無」。
禅の名著、無門関の有名な第一則です。
和尚が問うた。「何故達磨には髭がないのか」
第四則はたったこれだけです。
無門関の四十八の課題は、800年前に一人の禅の和尚がそれまでの様々な書物や語録から選び出したものです。猫を斬ったり、草鞋を頭に載せたり、水差しを蹴倒します。仏とは何かと問われ、乾いた糞かきへらだ、と答えたりします。平常心とは何かと聞かれ、平常心であろうとすることが既に平常心ではない、と言います。
私は無門関の不思議な面白さの虜となり、このテキストの内容を理論的に理解しようとしました。そしてその過程で自分の心の安らぎが得られたような気がします。
安心、心の安らぎとは、確固たる宗教を持たない日本人が、長い間求め続けてきたものだと思います。禅はその日本人の心を捉えてきました。
しかし、これは宗教の本ではありません。無門和尚の課題を、ビジネスから自然科学、バイオスフィアからクローン、不確定性原理から無量宇宙まで、最先端のトピックスと理論をあてはめ、禅の公案を判りやすく、かつ筋道立てて解釈しようとしたものです。
無とは何か、仏性とは何かという問いは、自分とは何か、この世とは何かという問いでしょう。無門和尚は無門関の全則でそれを追求し、最終第四十八則でその答を示している、と思います。生まれ、育ってゆく脳に最初に書き込まれる基本ソフトウェアは、いつどのように作られるのか。その結果として生じた自分の心とは何で、どこへ行くのか。それを解き明かす鍵を無門和尚は並べて見せてくれました。
門のない関所、無門関の世界を理論的に楽しんでいただき、現代の心の安らぎを見出していただければ光栄です。
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