SELECT900AMDさんのレビュー一覧
投稿者:SELECT900AMD
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2005/05/31 01:51
過激なストイシズムとしての経済人類学へ
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パンツシリーズの完結である。前作2著を背景にして、著者は私達に21項目にわたって、とうとうパンツの正体を明らかにしている。そのパンツは思っていた以上に古く、且つデカかった。
このパンツの正体については、本書を読むなりして理解していただきたいが、カザール人というユダヤ人の正体を暴露するくだりは、注意して読む必要がある。これを単なる陰謀史観として読むならば、本書を大きく誤読することになる。つまり、ここには、経済人類学の出自が述べられており、ここに語られるカザール人のエートスの内に、経済人類学の不の側面が述べられていると見るべきである。
カザール人の子分的存在であったマジャール人であるポランニー兄弟によって創始された経済人類学は、まさしく彼らアシュケナージのエートスでもある。マジャール人が現代社会に与えた影響はブダペスト物語に詳しいが、アシュケナージ全体が現代までこの世界のさまざまな側面で動かしていただろうことは想像に難くない。彼らは我々以前に既に経済人類学を駆使していたということだ。
著者栗本氏は、人間の顔をした経済を! という。エコノミーとはエコについてのノモスだが、氏は人間諸科学を駆使してこのノモスの内にロゴスを見出そうとする。そして、個々のエゴではなく、共にあることとしてのエコを取り戻そうとする。イデオロギー抜きにいえば、そのようなエゴノミーとしてのエコノミーをより普遍的なエコロジーとして捉えなおす試みが栗本氏の経済人類学だ。これを実践するとなると、ストイックにというだけでは足りず、世界を敵に回すほどの過激なストイシズムが要求される。毒をもって毒を制す。まさしく氏は今も毒入り教授だ。その処方箋が、ようやく本書によって明らかにされた。
そして、良薬は毒をも越えそうなほど苦かった…。
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