ミセスティガーさんのレビュー一覧
投稿者:ミセスティガー
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紙の本ポセイドンの涙
2005/07/10 21:03
ポセイドンの涙
3人中、3人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
「強奪箱根駅伝」以来の新刊で大変楽しみにしていました。物語の舞台は青函トンネルですが、このトンネルの歴史について何の関心も持たなかったことに今更のように気づかされます。
トンネルを掘るために作られた町、仕事がなくなってしまうと消滅する町。そこで育った3人の幼馴染が20年ぶりに再会するのと時を同じくしてはじまる事件。
トンネルの中で壁に塗りこめられた死体が発見されるあたりはまさしくミステリーの書き出しだが、パリで人気のブランドのデザイナーの苦悩ととその利権を狙う社会に翻弄される幼馴染の二人、更なる殺人事件。
小さな水産工場でイカを加工する中国からの労働者とそのオーナーの土地の絡む権利欲。
札幌から始めてこの地に来て何もわからない中必死に捜査を続ける刑事と地元の刑事たち。
20年以上前の保険金詐欺や、暗い親子関係の過去、、、思い出そうとしても全部は書ききれないぐらいにいろいろな要素を含んで事件は一気に青函トンネルを水没させるというシチュエーションに突入する。スケールの大きなエンディングは映画の「ホワイトアウト」を思い起こさせるようだ。
エピローグがまた振るっている。死体発見のプロローグとエピローグの事実がはじめてつながり余韻はたっぷりだ。
安東氏の「15秒」「強奪箱根駅伝」ともに最後の技術系の謎解きでついていけなかったが、今回は人間ドラマの様相が濃く最後まで楽しめた。
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