エイプリルさんのレビュー一覧
投稿者:エイプリル
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紙の本ずっと
2006/04/12 11:12
「言葉」と距離を置く
3人中、3人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
主人公の14歳の少女は現実世界に飽き飽きし、唯一心を許していたメル友の男と逃避行する。しかし、あれよあれよという間に風俗で客を取り、暴力を目の当たりにし、何かを見つけ、現実の生活へ戻っていく。そして生きていくのが少し楽になる・・・とストーリーだけ辿るとすごく薄っぺらい感じがする。でも何故だろう?読後に残るこの感触。風俗の主は言う。「ここは楽園やがな」。また風俗の客は「怖い怖いと思って毎日を生きてゆくよりは一歩でええから、この世界から飛び出してしまった方がええんやなかったんか。何であんなにびくびくしていったい何が怖かったんやろうな」。理解するのではなく触れることだ、とも書いてある。主人公は暴力というリアルな現実を体験しその直後「わたしは大丈夫だから」と内面と表面の合致した言葉を久々に口にし、解き放たれた感触を得る。
言葉を離れることで楽園へ飛び立つことができる。しかし、楽園と相反する現実の生活があることで楽園は楽園として成立している。主人公の少女が元居た現実生活はとてもいじっぱりで、でも少し目線をかえればそこだって自分にとっての楽園にすることができるのかもしれない。ほんとは夢も現実もすべてはお伽話のようなものなのかも知れない。と感じた。
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