浪速の不如帰さんのレビュー一覧

力強く、したたかに、そしてしなやかに………

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試験を受けた会社から、内定をいただきました。この数年間、アルバイトにしか就けなかった私にとって、夢のような話です。
景気が回復してきたことが、一番の理由でしょう。でも、あの狂乱的だったバブルのときを上回る勢いだなんて聞かされると、少し心配です。格差社会が一層進んでいるなんて言われると、ますます不安になってきます。
もうすぐ３０歳になろうとしている私が、４月に入ったフレッシュマンたちと今月から仲間になると思うと、少しばかり照れくさく、歯がゆい気がします。
それでももう一度、しっかり履歴書を書き、試験を受け、面接を受けて、結果を待とうという気持ちにさせてくれたのは、この一冊の本でした。
読み終えたところで履歴書を買いに、コンビニに行きました。
なにが、そうさせたのか、ページをめくっても、思い当たる部分はありません。いえ、そうさせた場所を探しなさい、と言われれば、いくつか指摘することはできます。
そのいくつかは、例えば「厳しい指摘」です。上司に対してもそうだし、若手社員たちに対してもダメなことはダメ、と斬り捨てています。
でも私はきっと、著者が述べている具体的な部分より、全体に流れる暖かい眼差し（まなざし）に動かされたのだろうと思います。
上司は部下を愛せ！ とありますが、同僚同士も、あるいは職場の垣根を越えての愛が必要なのだ、と著者は言いたかったのではないか、と私は読みました。
この数年にアルバイトとして味わったことは、ムダだと思わなくて済みそうです。「窮地から脱するためのヒントは、いうまでもなく回り道という経験のなかに隠されている」という著者の指摘に救われました。
正直、素直にそう思えるようになってきました。
著者の方は、私の親と同じ世代です。私は親から、このようなことを言われたことはありませんでした。肉親だからこそ、言いにくかったのかもしれません。
遅ればせながら、社会貢献に参加しようと思っています。
自分の力を信じたいと思います。
親から授かった自らの体を壊すな、という強いメッセージと、働く人たちへの著者の温かい視線に支えられながら………。