山村 芙蘭さんのレビュー一覧
投稿者:山村 芙蘭
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紙の本うたかた 上
2001/02/08 14:33
新聞連載の限界に挑戦したエロティシズム
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妻と別居同然の作家安芸と、夫を愛せない抄子が美を求めて逢瀬を重ね、愛を深める。
家庭の在るもの同士の恋愛は、渡辺氏の得意分野だが、主人公の安芸は、いままでの複数の女性の間をさまよういわゆる優柔不断な男性ではなく、抄子だけを見つめ、愛している。
とはいえ、いかに深く純粋に愛し合っても、お互いに家庭を持つ身であると、それを世間的に正当化することはできない。雪の中に2人きりで閉ざされるシーンは、社会生活からの孤立を象徴するようで感動的である。
うたかたの中に新しい情念の発現を見る愛の形が時代の共感を呼び、“うたかた族”の造語ができた。
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