MIYAさんのレビュー一覧
投稿者:MIYA
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紙の本宇宙海兵隊ギガース 1
2002/04/10 18:22
最新型は伊達…かも知れない。
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いきなりだが、本作は余りよい作品ではない。表紙から連想されるような、いわゆる「リアルロボットアニメ」型の小説だと思うと痛い目に遭うだろう。ジャンルとしては「ロボットもの」に入れるべきだろうが、どうにも内容が散漫で視点が定まらない。なんとなく、読む方にも根性が入らないのだ。淡々と物語が進むのはけっこうだが、入り込めないので置き去りにされている気分になることさえあった。
ヒュームスという人型の機動兵器。新型機「ギガース」とその専任パイロットであるサイバーテレパスの少女、リーナ・ショーン・ミズキ。堂々と表紙を占拠していながら、実際のところ彼女らは主人公とは言い難い。あまり出てこないし。
可愛いと思えるエピソードは特になし、頼もしいと思うには活躍の場が少なすぎる。そのわずかな活躍さえも、彼女の存在を際立たせるものではない。本作で際立っているのは主として男臭い男たちで、彼らの言動ひとつ、行動ひとつにストイックな魅力を感じる。リーナからは、あざとさばかり感じてしまうのだ。
ロボと美少女のカップリングは正直いって好みだが、あまり上手い使い方をしているとも言い難い。否、言えない。本作には、ハッキリ言って不要な要素とさえ思えるのだ。
(全ての)キャラクターには「萌え」が足りないし、不自由極まる「軌道戦(「機動」にあらず!)」も、新鮮だが今ひとつ「燃え」ない。敵である「ジュピタリアン」には魅力が乏しく、散りばめられたさまざまな伏線も、単純な描き込み不足で引き込まれていかない。どこを取っても「足りない」のである。三部作の予定と言うが、初巻でこれでは少々辛い気がするのだが…。
ハッキリ言って、ガンダムマニア、SFマニア、ミリタリーマニアといった「マニア上がりの作家」が自分の好きな要素だけで組み上げてしまった作品のような、そんな印象が強い。作者の今野敏氏はもともとマニアックな傾向が強く、それがウリでもある作家だが、今回はどうにもいただけない。
評価は星3つ。潜在的に魅力的な要素は、たくさん散りばめられている。が、ばらまいただけであり、読後に心に残るわけでもひっかかるわけでもない。しかし、ミリタリーSF的な観点からはなかなか引きつけられる点があるとも思える。こだわりが見えるのだ。星3つのうち、少なくとも星1つはその点を特に評価してのものである。ロボットものであるという点にこだわらなければ、本作の評価はまた一段違ったものになるかも知れない。
紙の本プラネテス 2
2002/02/13 22:55
こんなにも大きな“宇宙”の物語
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本作は21世紀後半、木星系の開発という人類の新たな挑戦が始まろうとしている時代を背景にした近未来SFである。すでに一冊の既刊があり、以後も続刊の予定。難しいことはいい。是非とも続いてもらわなければならない、珠玉の名作であると断言しよう。
第1巻では主人公三人を中心とした群像劇だったが、この第2巻では主人公をハチマキ一人に絞り、彼が「夢への第一歩」と位置づける、木星往還船クルー選抜の過程を描いている。
見所は彼の後任としてデブリ回収に当たることになった、タナベ嬢とのたびたび繰り返される信念の応酬だ。もともと異なる立場や価値観のぶつかり合いがよく描かれている本作だが、彼女とハチマキのやりとりはある意味で作品の根幹に関わるテーマそのものだといえる。
「夢のためには魂だって売る」というハチマキに、「愛のない選択はよい結果を生まない」と主張するタナベ。「宇宙は一人じゃ広すぎる」というタナベの存在が、最終的にはハチマキの「ちっぽけな宇宙」を大きく書き換えていくのだが…この辺りには少々、強引な部分が見えるかもしれない。だが、ご都合と言えるほどではないだろう。
ラストでの、憑き物が落ちたような主人公の表情と余裕ある呟きは、単行本一冊を通じて描かれる価値のあるものだと思う。
ネームが多く、描き込まれた絵にありがちの読みにくさは感じない。むしろすっきりとまとまっていて、読みやすいと思うくらいだ。絵柄の好みはともかく、その画力には文句の付け所はないだろう。「精緻だが力強い絵」という私的な印象はそのまま、さらに技術の向上が見られる。その描く人間は生きており、宇宙は果てしなく広大だ。
とにかくパワフルな作品である。ハードSFを気取って読者ウケする些末な設定にこだわるよりも、しっかりとした人間のドラマを描いている点に好感が持てる(もちろん、充分すぎるほどSFだ。心配無用)。前向きな意思の力を喚起されるという意味では、あらゆる年代に問題なく勧められるだろう。
2002/02/06 00:49
「A君」達の物語。
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“ちんちくりんな見かけで気も弱く、典型的ないじめの対象。しかし逆襲する知恵も根性も持ち合わせている主人公が、ある日、見知らぬ異世界へと召還される。危機に瀕した魔族達を救うべく、「魔王」として…。”
「勇者」を「魔王」と読み替えただけの、一見ありがちな設定で始まる本作だが、意外と深いテーマ性を内包した作品だ。読み進むにつれ、「A君」という一語にさえ、いくつかの意味が読みとれる事だろう。だが重苦しさはなく、タイトルや表紙イラストから見て取れるとおりの、ライトファンタジーの王道を行く楽しい作品である。
本編は軽快な文章で読みやすく、「伊東岳彦&モーニングスター」のイラストも世界観によくマッチして好感が持てる。一巻目にしては多い登場人物も、チョイ役に至るまでみな個性的で感情移入を誘う。主人公の心理描写も克明に為されていて、彼の葛藤や決意がよく描かれている。さらに燃えあり、萌えあり、涙もあり、サービス精神旺盛だ。用語やシチュエーションは和製ファンタジーの使い回しばかりだが、それがかえって入り込みやすさを高めているとも言えるだろう。
総じて目立つ欠点は見当たらない。一読して楽しく、続きが読みたくなること請け合いの、オススメの一冊である。
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