ナカノさんのレビュー一覧
投稿者:ナカノ
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2007/07/31 12:54
ゆれる大相撲
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千秋楽の表彰式に女性だから土俵に上がれないのは男女差別だという騒ぎがあったのは記憶に新しい。それって何か変と感じたのは私だけでしょうか。けれどその問題に関して日本相撲協会は伝統を掲げて拒否するだけで明確な回答を示せずにいる。
大相撲をこよなく愛する内館さんはそんな世の中の流れに危機感を覚えて、あらためて相撲を研究し直そうと東北大学大学院に入学したのでした。本書はその学位論文をもとに書き直したもの。
内館さんは伝統芸能や祭事における男女別と、女性が社会的に受けている差別は同列ではなく意味が違うのだから、社会情勢が変化したから、男女同権の世の中だからという理由で形を変化させていくのは伝統を殺す行為なのではと述べている。
興行としての大相撲も同様で、長い歴史の中で紆余曲折があったにせよ様々な工夫で今までその形を守ってきた。だがここにきて急速な時代の流れの中でこれからの方向性を確立できていない。先に述べた男女差別云々のほか、数が増えて制御が利かなくなってきている外国人力士をどう相撲の伝統に沿わせていくのかといった問題などもそうだ。
よく横綱審議委員会で内館さんが相撲協会の理事にきびしい意見を突きつけているが、伝統を守るには守る側にもそれを貫く強さが必要と考えているからなのでしょう。
勝負の勝ち負けだけでなく、土俵上での打ち出しの音、呼び出しの声、行司の姿、かちなのり、土俵入りなどそれら一切を含めた様式(伝統)はこれからも存在し続けてほしいと思う。そんなわけでこれからもがんばってほしいとひそかに内館さんを応援している私です。
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