ハンペルマンさんのレビュー一覧
投稿者:ハンペルマン
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2008/08/17 10:49
陥落後のベルリンの様子を生々しく伝える
7人中、7人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
1945年4月20日から,この日記は始まる。著者は当時三十代のドイツ人女性。ベルリンで暮らしていた彼女が,ロシア軍に占領され略奪され陵辱された日々の出来事を綴ったものが本書である。
海外経験豊富でロシア語も話せるこの女性は,日記の内容から,文学や政治経済などの幅広い知識を持った教養人であることがうかがえる。著者名や素性は本人(既に故人)の意向で公表されていないが,序文によるとジャーナリストらしい。そのため,日記とは思えないほど文章がよくまとまっている。
最悪の状況下,この著者は自分の身を守るための方法を考える。語学力を活かし,力のあるロシア人をパトロンにしたのだ。その結果,下っ端の兵士たちから無闇に乱暴されなくなり,愛人から食糧などを手に入れることにも成功した。
日記にはロシア人に対する感情的な悪口はそれほど書かれていない。過酷な状況に身を置きながらも,著者は冷静に彼らを観察し,軍の階級やロシアの人たちの国民性などを書き留めている。彼女は書くことによって精神のバランスを保っていたようだが,物資が乏しく筆記用具も明かりも不足している状況でこれだけ詳細な記録を残したとは,さすがジャーナリスト。後世に貴重な資料を残してくれた。
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