こーのくんさんのレビュー一覧

斗満の河

3人中、3人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

斗満の河を読み終えた。大変読み応えのある本で、多少てこずったが、著者の綿密な歴史考察と、入念な取材に感服した。一般にスポットの当たらない人物を取り上げた力作だと思う。
我々は、一人一人が自分の描いた人生のシナリオに沿って生きてゆく、ヒーロー、ヒロインでありながら、大多数の人間が、歴史的にスポットライトを当てられることも無く朽ち果てていく。この本の主人公、関寛斎もまた、歴史の中に埋もれた人物だったのだろう。それが、著者、乾浩氏によってスポットライトを当てられたことで見事に甦った。これが、歴史小説の醍醐味だろう。
このような地味な小説が、メガヒットを生むとは思わないが、密かに、しずかにブームとなって欲しい。