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コラム

丸善ジュンク堂のPR誌 書標(ほんのしるべ) 2019年8月号

今月の特集は
『“狂騒の二〇年代”とF・スコット・フィッツジェラルドの世界』
『ロックンロールは流れているか』

丸善ジュンク堂のPR誌 書標(ほんのしるべ)。今月の特集ページを一部ご紹介致します。
気になった書籍はネットストアでご注文も可能です。
(※品切れ・絶版の書籍が掲載されている場合もございます。)

すべての内容を、WEB上でお読み頂けます。





今月の特集(一部抜粋)



 『ロックンロールは流れているか』

今年もロックンロールの季節がやってきました!
世界中から名だたるアーティストがやってきて、一日中音楽を奏でる祭典。同じ音楽を好きな者たちが集って非日常を盛り上がる、もう天国みたいなところですが、今回ご紹介する本は音楽を紹介するものではありません。フェス飯もございません。
昨年大ヒットした映画「ボヘミアン・ラプソディ」が多くの人の胸を打ったのは、移民という出自であり性的マイノリティであるフレディ・マーキュリーの孤独、懊悩、混沌が、音楽という形になって爆発したためでありましょう。そもそも、ロックンロールのルーツは黒人のブルースにあります。奴隷としてアメリカに連れてこられたアフリカ人、搾取され差別され続けた彼らの悲しみや怒り、つらく苦しい日々を昇華させ、忘れさせてくれるものが音楽(ブルース)だった。
胸を打つ本の中にはロックンロールが流れている、とわたしは思う。
ぜひ読んでいただきたいわたしのロックンロールを紹介します。

■『青い眼がほしい』(ハヤカワepi文庫・トニ・モリスン著・七八〇円)
一九四一年、アメリカの貧しい家庭に暮らす少女、ピコーラ。黒い肌を持ち、髪は縮れていて、学校でいじめられている彼女は家庭にも恵まれず、わずか十数歳にして実父にレイプされ、子を身ごもります。彼女は願います。「青い眼がほしい」。それは、彼女の根本の存在を否定するものです。
この本を知ったのはつい最近のこと、西加奈子さんが紹介しているのを読んで、ぜひとも読まなくてはと切羽詰まるぐらいの衝動を覚えた、それほどその紹介文は素晴らしく、そして読んだところ、一ミリの相違もありませんでした。著者はこの悲劇に対して言い訳も同情も与えず、淡々と書き綴ります。ピコーラの父もまた、母親からゴミ捨て場に捨てられた子ども、社会の被害者だった。ロックンロールとは、社会へ「なぜ」をつきつけることでもあります。
著者トニ・モリスンはノーベル文学賞を受賞した黒人の女性作家です。アメリカという国で黒人であるということは差別の歴史を背負って生きるということ。それは時として、その人の価値観をも奪ってしまうものなのでした。

■『何でも見てやろう』(講談社文庫・小田実著・八四〇円)
アメリカの黒人のことはこちらも詳しいです。
一九五〇年代、ひとつアメリカへ行ってやろうと思いつき、実行に移した著者。のんきな島国で生まれ育った黄色人種の若者は、アメリカ南部で、駅の待合室が黒人専用であることに気づき、考えます。公民権運動が五〇~六〇年、悲惨の一言ではくくれない差別を受けてきた黒人たちが、権利を求めて声を上げ始めたまさにその時代の話です。
ゲイも芸術家もインテリもツツモタセ?も同じように付き合い、言いたいことをいう著者は、そののち、インドのカルカッタで二晩野宿をするにいたって、世界の現実に完全にまいってしまう。この旅行の経験が、帰国後、彼をベ平連の活動へと駆り立てました。
この本をどう感じるかで、その人がわかるような気がします。

■『アメリカ死にかけ物語』(河出書房新社・リン・ディン著・三二 〇〇円)
以上二点は半世紀以上前のアメリカの話でしたが、では現代は?
「俺は移民であり、大学中退者で、生まれてからずっと金で失敗してきた」というベトナム生まれの著者が、バーや路上で出会った「社会の底辺」に暮らす人たちについて書いた本です。ホームレスの男、薬物中毒の女、退役軍人。黒人を神とし、白人が悪であると演説する黒人の男が出てきますが、そのねじれた差別は、残念ながら、いまだに黒人と白人はわけられたままであることを証明しています。この本のよさは、頭のおかしくなったやつにははっきりと嫌悪を示すところ。それは真逆のようですが、その人間に対する敬意であるように思いました。

■『彼女たちの場合は』(集英社・江國香織著・一八〇〇円)
その現代のアメリカを、十七歳と十四歳の従姉妹が、二人きり、アムトラックや高速バスを乗り継いで旅します。わくわくが止まらないキュートな物語です。
ビート文学の金字塔『路上』をひくまでもなく、ロックンロールは旅と親和性が高く、それは日常をドロップ・アウトすることであり、敷かれたレールの上から降りるということ。そして、旅の上では、みな、丸はだかであります。
旅を続ける上で、彼女たちもいくどか選択を迫られます。すこし危険な目にもあってしまいますが、無事、旅を終えたときには、彼女たちなりの真実に近づいている。ピュアな旅の一部始終を、こうして読めたことが幸せでした。

■『ろまん燈籠』(新潮文庫・太宰治著・四九〇円)
旅はロックであると言ったすぐあとでなんですが、生活にもまたロックンロールは流れます。
借金の申し込みや心中事件で有名な太宰ですが、ただただいい小説を書きたかった、それだけを純粋に追っていた人なのだと思います。
こちらの文庫には一九四一~四四年、太平洋戦争の間に書かれた作品が集められています。最後の「東京だより」だけでも読んでみて下さい。「東京は、いま、働く少女で一ぱいです。」から始まるわずか四ページの小品です。
大変な戦争中にあって、人々は日々の生活だけで手いっぱいであり、そんな中、同じ生活者太宰の目は、ひとつもくもることなく、美しいものを書き出すことができた。言ってもいいですか? 太宰は天才です。悪ぶったことをいうのは、彼の芸です。みんなみんな、最後の美しさのための演出なのです。

■『東京物語』(集英社文庫・奥田英朗著・七一〇円)
取引先の無茶ぶりに、社長の使いっ走り、東京の街をバタバタ駆けずり回ったその日、タクシーから流れてくるラジオでジョン・レノンの死を知る。時代のアイコンとしての音楽が印象的な連作小説です。明日も見えない不安と社会への漠然とした恐れ、しかし根拠のない自信はあって、夢だけはたくさんもってるぜ、なんていう若者の泥臭いジタバタは、ロックンロール以外の何物でもなく、一九八〇年代の話ですが、現代の若者の胸にも響くのではないでしょうか。
ちなみに一九八九年に「メンバー全員四十過ぎになって来られてもなあ」とぼやかれているストーンズですが、二〇 一九年、七十過ぎて、ヨユーで現役です。

■『フィッシュストーリー』(新潮文庫・伊坂幸太郎著・五九〇円)
表題作は売れずに解散してしまったバンドの最後のアルバムから始まる物語です。間奏の途中、一分間ほど無音になる部分があり、そこにこめられた祈りが、めぐりめぐって奇跡のような出来事につながるという、できすぎているといえばできすぎた話なんですが、ロックは世界を変えられるとまあまあ本気で思っている単純なロックファンのわたしとしては、こんなお話も大好物なのです。

・・・・つづく

2019/08/01 掲載

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