フェア 開催終了 丸善 京都本店
開催日時:2022年05月19日(木)~2022年06月30日(木)
【注目の新刊】E.H.カー『歴史とは何か』全面新訳となって発売となりました!
歴史は現在と過去のあいだの対話である――。この有名なフレーズで知られる『歴史とは何か』は、E. H. カーが1961年にケインブリッジ大学でおこなった6回の連続講義がもとになっています。「歴史家とその事実」「社会と個人」「歴史・科学・倫理」「歴史における因果連関」「進歩としての歴史」「地平の広がり」という、歴史を考えるうえで最も重要なテーマが盛り込まれており、歴史学の最良の入門書、20世紀の古典と言われています。今回、初版の本文と「第2版への序文」を新たに訳出し、晩年のカーによる自叙伝、訳者による懇切な訳註と解説などを加え、全面新訳となって新たに発売となりました。ただいまB2の人文書コーナーでは、発売を記念したフェアを開催しております!
本書には、歴史と歴史学をめぐる印象深いフレーズがふんだんに盛り込まれています。
例えば、「歴史的事実とは」の章で、カーは「過去のすべての事実が歴史的事実というわけではない」とし、そのうえで「過去の事実と歴史的事実とを区別する基準は何でしょうか。」と問いかけます。そして、「歴史的事実というステータスは、解釈という問題にかかっています。この解釈という要素が、あらゆる歴史的事実に入りこんでいます。」といいます。だからこそ、「歴史家の解釈とは別に、歴史的事実のかたい芯が客観的に独立して存在するといった信念は、途方もない誤謬です。ですが、根絶するのがじつに難しい誤謬です。」と語ります。また、歴史学の働きについて、「過去は現在の光に照らされて初めて知覚できるようになり、現在は過去の光に照らされて初めて十分に理解できるようになるのです。人が過去の社会を理解できるようにすること、人の現在の社会に対する制御力を増せるようにすること、これが歴史学の二重の働きです。」 といいます。
歴史とは何か、歴史的事実とは何か、ということを、私たちの思い込みや見落としている部分も含めて見つめ直し、考えるきっかけになるまさに最適な入門書です。
これまで親しまれてきた清水幾太郎氏訳の岩波新書版の『歴史とは何か』も引き続き現役ですので、ぜひ読み比べてみてください。他にも、カーの著作『ロシア革命 レーニンからスターリンヘ、1917−1929年』(岩波現代文庫)や、『危機の二十年 理想と現実』(岩波文庫)などもご用意しております。武井彩佳さんの『歴史修正主義』(中公新書)も、「歴史とは何か」を考えるきっかけになると思います。この機会にぜひご覧くださいませ!
2022/05/23 掲載