コラム
丸善ジュンク堂のPR誌 書標(ほんのしるべ) 2024年6月号
今月の特集は
『幽霊にゾゾゾッ』
『旅に出たくなる本』
丸善ジュンク堂のPR誌 書標(ほんのしるべ)。今月の特集ページを一部ご紹介致します。
気になった書籍はネットストアでご注文も可能です。
(※品切れ・絶版の書籍が掲載されている場合もございます。)
すべての内容を、WEB上でお読み頂けます。


今月の特集(一部抜粋)
『幽霊にゾゾゾッ』
幽霊って、いると思いますか?
一般的に、亡くなった人が様々な姿で生きている人の前に現れるという幽霊。これまでに、落語や小説などの創作ではもちろん、様々な証言や記録にも「幽霊をみた」という人が出てきます。
科学的にその存在が証明されているわけではありませんが、この幽霊という存在に、様々なアプローチで真剣に向き合って探究を続けている人たちがいます。歴史学者、民俗学者、文学者、僧侶、新聞記者、落語家ほか。
今回のフェアでは、さまざまな幽霊にゾッとしていただきつつも、ただ「不思議」で終わらない、「幽霊とはなにか」について研究する姿勢の本を中心に集めました。
梅雨のおこもりのおともに、ぜひごらんください!
歴史学
山田雄司著『跋扈する怨霊 祟りと鎮魂の日本史』(吉川弘文館・1,870円)は、歴史学者が怨霊という存在に向き合って著した1冊。歴史研究者の方は、史料にもとづき事実の検証を積み重ねられていると思いませんか? ですから、「怨霊」という目に見えないものについてどうやって取り組まれたのか不思議に思って興味がわきました。長屋王にせよ、菅原道真にせよ、崇徳院にせよ、霊が人前にあらわれて名を名乗ってから災いをもたらすわけではありません。しかし、歴史上の資料にはこの大火事は誰それの祟りではないか、といったことがしっかりと記載されているのです。つまり、生きている人が、怨霊の存在を感じていたことは歴史資料に残っている。怨霊の研究は、良心の呵責の歴史ととることもできるし、霊魂観や宗教観、道徳観の歴史ととらえることもできるのです。
同じ山田雄司先生の『怨霊とは何か 菅原道真・平将門・崇徳院』(中公新書・836円)は、日本三大怨霊ともいうべき菅原道真、平将門、崇徳院の三名に的を絞り、怨霊の誕生から鎮魂までをたどり、霊魂の概念の解明に取り組まれています。
2018年2月10日に二松学舎大学で開かれたシンポジウムは、大教室が超満席。異様な熱気に包まれました。シンポジウムをもとに書籍化されたのが『幽霊の歴史文化学』(思文閣出版・小山聡子・松本健太郎編・品切)です。テーマは「日本人は幽霊を感知し、それを表象するためにどのような工夫をしてきたのか」。幽霊といっても、内容は多岐にわたります。『古事記』『日本書紀』『万葉集』などの古代の死霊の話から、現代のデジタルの中の幽霊まで。いま「幽霊」に学問として向き合うときの多様な視点を教えてくれます。
…続く
2024/06/01 掲載